新しい年を迎え、一言ご挨拶申し上げます。
昨年は震災、原発事故また国際的には経済問題が大きく取り上げられ荒波に翻弄される木の葉のように我々の暮らしそのものが影響を受けました。
また藤原歌劇団中興の祖とも言うべき五十嵐先生の突然のご他界という悲しい出来事もあり波乱万丈の一年でした。2012年が平穏な年であってほしいと考えるのは万人の願いだと思いますが社会そのものが激変している中、我々もその変化に遅れない対応が必要になってきます。
リクルートの江副氏がJOFの理事長だった時に『歌い手は商品なのだから、商品が自分でチケットを売りに行く必要はない』とおっしゃったことが耳に焼き付いています。しかし、当時はバブル真っ盛りの時代で、公演すればチケットは売れるという状況でした。その当時の感覚で事業をしていてはいけないという反省を感じています。
昨年来、かなり大胆な発想の転換を行い団会員企画コンサートのような新しいプログラムも生まれました。また主催公演でも「ルチア」「セビリャの理髪師」共に高い評価をいただきました。現在、3月の公演「フィガロの結婚」に向けて充実した稽古が進んでおります。先月、演出家のマルコ・ガンディーニが来日し自らイタリア語のディクション指導を行い出演者全員が参加し、質の高い公演をめざしております。
長期的な展望としては優秀な人材を海外に送り出せるシステムを構築すると同時に、海外公演も視野に入れて一層の飛躍をめざしたいと考えております。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
藤原歌劇団公演監督
岡山 廣幸
新年おめでとうございます。
皆様も良き年をお迎えの事と思います。
昨年は思いもかけず、日本人としてのアイデンティティを問われることとなりましたが、本年は気分を一新、あらたな気持ちで皆様と共に元気で活動を続けたいと願っております。
一月二十一日、二十二日と委嘱オペラ「高野聖」を公演しますが、これは「日本オペラシリーズ」(一九六五年開始。現在七三回)で生み出した三十曲目の作品となります。
この事業は文化庁助成による地域の音楽活動の活性化を目的とするもので、原作の泉鏡花の生地である金沢の熱い思い、それに賛同頂いた高岡、そして国民オペラの創造を願う日本オペラ協会、三者による「共同制作公演」として行われるもので、その目的に応じ、地域の活力を積極的に活用、演奏は「オーケストラ・アンサンブル金沢」。オーディションによりキャストの一部、合唱を起用、オーケストラは当然としても、合唱メンバーの意欲と集中力は見事に舞台を支えてくれました。(東京公演は日本オペラ協会合唱団による。)
既に北陸シリーズとして、昨年十二月九日金沢で幕を開け、十二日高岡での公演を行っています。(共に二十二日キャストによる。)
地域発信のオペラとして、関心も高く、金沢、高岡共に市長もご来場、満席の観客の期待、特別な緊張感の中での開幕でしたが、幸い作品、演奏、舞台形象共に極めて高い評価を得ています。
二十世紀の作曲語法によるオペラは極めて難易ですが、キャストはよく対応し、真摯な努力により確かな演奏を示してくれました。現在の歌手たちの潜在的能力、集中力を改めて認識すると共に、それを支える組織の在り方、特にコレぺティ、副指揮による音楽スタッフの理念に基づく、献身的な努力の重要性を意識、今後のオペラ制作の指針と心しています。
作品に対する論議はすべての公演終了してからのことになるのですが、金沢、高岡公演において池辺さんのオペラを演劇の一部と位置づけ(ドラマの進行を第一義とする)ドラマと密着、オスティナートによるトランス効果、高度な歌唱テクニック、豊潤なオーケストレーションによる語法は金沢・高岡の公演でも観客に自然に受け入れられ、感動を与えていました。多少の改訂を口にしておられますが、日本オペラのレパートリーとして貴重な存在となることは間違いないと確信しています。
これまでも多くの作品を生み出してきましたが演奏されなくては普及が望めないわけで、可能な限り再演をおこない改訂を加え、完成度を高め資料を整えてきました。このオペラも大切なレパートリーとして公演機会の広がりを願っています。
二十四年度の事業としては四月に「歌まつり」を企画しています。他幾つかの企画が提案をされていますが現在未定です。財団事業活性化のためにも是非皆様の積極的な希望、提案を取り上げていきたいと思いますので遠慮なく御意見をお寄せ下さい。
日本オペラ協会総監督
大賀寛
