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作品について

今村昌平 台本/池辺晋一郎 作曲「魅惑の美女はデスゴッデス!」
オペラ全2幕 字幕付き日本語上演

プッチーニ作曲「ジャンニ・スキッキ」
オペラ全1幕 字幕付き原語(イタリア語)上演

日本オペラ振興会設立40周年を迎え、
藤原歌劇団と日本オペラ協会が同時公演
「生と死」を描いた2つの喜劇は必見!

イントロダクション

 日本オペラ協会と藤原歌劇団が〈日本オペラ振興会設立40周年〉を記念しての合同公演として、アルテリッカしんゆり2021で「魅惑の美女はデスゴッデス!」(全2幕)と「ジャンニ・スキッキ」(全1幕)をダブル・ビルで上演!
 日本オペラ協会が上演する「魅惑の美女はデスゴッデス!」は、映画監督の今村昌平の台本、池辺晋一郎の作曲。原作は、三遊亭圓朝が作った有名な落語「死神」。落語に出てくる死神は男だが、オペラに出てくるのはタイトルにもなっている魅惑の美女である死神。ところでこの落語の元になったのは、19世紀のイタリアで、ヴェルディのオペラ「リゴレット」や「ラ・トラヴィアータ」などで知られるピアーヴェの台本に、ルイージとフェデリーコのリッチ兄弟が作曲した「クリスピーノと死神 Chrispino e la comare」というファンタジー・コミックオペラ。そこに出てくる死神は、男を惑わせる美しい姿なので「デスゴッデス」は、大元のキャラクターに戻ったとも言える。
 リッチのオペラの主役クリスピーノはヴェネツィアの靴の修理屋だったが、この池辺作品では葬儀屋の亭主、早川(村松恒矢4/24、山田大智4/25)となる。この亭主は稼ぎが悪い上に男としても役に立たないものだから、女房のたつ(家田紀子4/24、沢崎恵美4/25)に愛想をつかされる。頭を抱える早川の前に現れるのが、死神たる魅惑の美女(長島由佳4/24、相樂和子4/25)。その魅力的な死神にそそのかされて、早川は(こちらは落語の死神と同じ方法で)次から次へと瀕死の病人を助けて金儲けをして、死神も他の美女もものにしていく。しかし、そこには魅惑の死神が所属する死神会社の狙いが隠されていたのだった……。

 藤原歌劇団が上演するのは、プッチーニ作曲のフィレンツェを舞台にした「ジャンニ・スキッキ」。こちらはダンテの「神曲」地獄篇をベースにフォルツァーノが台本を書いた。この作品には死神こそ登場しないが、よそ者で恐ろしく知恵のまわる「生きた死神」ともいうべきジャンニ・スキッキ(上江隼人4/24、牧野正人4/25)が、財産家ブオーゾ・ドナーティの遺産をめぐる親戚たちの争いに仲裁するふりで介入してくる。このオペラは、これをオペラと呼んでいいのかと言いたくなるほどの喋りの応酬で作られている。そんな中で若い恋人たちであるジャンニの娘ラウレッタ(砂川涼子4/24、別府美沙子4/25)には「私のお父さん」、ブオーゾの従兄弟の甥リヌッチョ(海道弘昭4/24、渡辺 康4/25)には「フィレンツェは花咲く樹木のように」という、このふたりにだけ与えられている美しいメロディは、いわばこの作品における清涼剤の役割を持っている。他の登場人物たちは、芝居の役者よろしく阿吽の呼吸でセリフのやりとりを重ねていかねばならない。本当の意味でのこのオペラの主役は、ジャンニでも若い恋人たちでもなく、親類達を演じる歌手たちとであるとも言えよう。

あらすじ

池辺晋一郎「魅惑の美女はデスゴッデス!」全2幕

第1幕
プロローグ(第1景)

マーチが鳴り響く中で幕が開くと、人々が「この世はすべて金次第!」と叫んでいる。
そして駅前にできた大塚薬局の宣伝が続く。
第2景
ところはかわって、こちらは閑古鳥が鳴く早川葬儀社。「薬ができて、人が死ななくなったせいで商売上がったりだ!」と嘆くのは亭主の早川。その様子と、夫が男として役に立たないことを嘆く妻たつは、おじさんのところに養子をもらう相談に行く、と出て行ってしまう。
妻に罵倒された早川が、腐って棺桶の上に座り込んでいると、その棺桶の蓋が開いて、世にも美しい若くセクシーな女性が現れる。そして「私は死神会社のセールスウーマン。あなたを医者にしてお金儲けをさせてあげる。病人のところに行ったら、あなただけには私が見える。私が病人の足元にいれば、その病人は助かり、頭のほうにいればその病人は助からない。その病人を助けたければ、私が寝たふりをしている間に病人を180度くるりと回転させればいいのよ。それであなたは名医と呼ばれて、いくらでもお金儲けができるわ。その代償は病人を助けるたびに私を抱いてくれればいいのよ」と早川に持ちかける。早川に文句のあるはずもない。
第3景
金丸製薬の社長が危篤と聞いた早川がやってきて、臨終を告げられた社長をぐるりと回転させれば社長が蘇る。
第4景
今度はヤクザの親分が全財産を出すから息子を助けてやってくれと医者に懇願している。
そこにやってきた早川が、同じ手法で、その息子を助ける。
第5景
こちらは轟自動車の社長邸。早川の評判を聞いて迎えにきた執事とともに彼が現れると同じように社長が蘇生する。
第6景
面白いように金儲けができて、早川はキャバレーでホステスを侍らせて大騒ぎ。
そこに現れた歌姫は、死神。彼女に浪費を責められ「今ここで約束を果たして」と言われた早川がたじろぐと、周りにいたホステスたちが本来の死神の手下の姿になる。そこで初めて早川は妻のことを思い出し、罪の意識を感じ始めたところで幕となる。

第2幕

死神が観客に自己紹介のアリアを歌う。
第7景
暗い地下。タンゴのリズムの二重唱は、愛欲にはまった早川と死神を表している。死神から「あなたの寿命は72歳と10ヶ月よ」と告げられた早川は、長生きできると喜ぶ。しかし背後ではドクロ達が早川がおめでたいやつだとせせら笑っている。
第8景
何ヶ月ぶりかで家に戻った早川は、自分が助けた社長達は皆悪人であったことを知って愕然とする。死神の誘惑に乗って手を貸したことで、罪もない人々のことを死に追いやってしまったことを後悔し、改心しようと誓う。そこに以前助けたヤクザの息子、鉄がやってきて「鬼虎組の組長を生き返らせろ!」と早川を無理矢理連れて行く。
第9景
鬼虎組組長宅で、早川はわざと組長の頭を死神に向くようにして、組長を死なせる。怒った鉄は早川を刺し殺す。
第10景
間奏曲ののち、早川が目を覚ますとそこあるのは無数の燃える蝋燭。72歳まで生きられると言われていたはずなのに、自分の命の蝋燭が消えかかっているのを見た早川は驚く。死神はその寿命が、早川が彼女を抱くたびに一年ずつ削られていったこと告げ、それでも早川を憎からず思っていた死神は13年分を誤魔化したのがばれて、死神会社をクビになったのだとも語る。なんとかして命をつなげようと、早川は消えかかった蝋燭に新たな蝋燭を継ぎ足そうとするが、時刻は迫る。
エピローグ(第11景)
早川の葬儀が執り行われている早川葬儀社。そこには臨月近い妻と、その相手である若い葬儀屋が座っている。死んでしまったはずの早川の命は、実は妻の腹の中の赤ん坊として蘇る、というオチで、このオペラは終わる。

ジャコモ・プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」全1幕

1299年フィレンツェ。財産家で独り者だったブオーゾ・ドナーティが息を引き取った。
集まった親戚たちは口々に彼の死を嘆いているが、実際は遺産相続がどうなるのか、気が気ではないのが本音。シーニャに住むベットが、ブオーゾが全財産を修道院や慈善事業に寄付をしたと聞きつけてくる。一族でも年上で、フチェッキオの村長の経験もあるシモーネに皆の注目が集まる中、彼が「その遺言書が、まだ公証人の手に渡っていなければその遺言は無効だ。家の中を探せ!」と言うので、全員が家のあらゆるところをひっくり返すが遺言書はなかなか見つからない。そんな中でジャンニ・スキッキの娘ラウレッタに恋するリヌッチョは財産を得て、彼女にプロポーズしたいと願っている。その彼が遺言書を見つける。取り上げようとする叔母のツィータに「遺言書を見つけたのは僕だよ。これを渡す代わりにラウレッタとの結婚を許してよ」と持ちかける。遺言書の内容が気になるツィータはそれを了承する。そこでリヌッチョは幼いゲラルディーノにジャンニ・スキッキとラウレッタを呼びに行かせる。

遺言書を開いてみれば、うわさ通りに全財産を寄付すると書いてある。なんとかできないかと悩む親類一同にリヌッチョは「それならジャンニ・スキッキに相談すればいい!」と言うが、よそ者で、抜け目のない男と評判のジャンニを呼ぶなどとんでもない!と、親族たちは口々に言う。

そこでリヌッチョは「フィレンツェはいつも外から来る人たちの力を借りて発展してきたじゃないか!」と、お気楽に歌う。「フィレンツェは花咲く樹木のように」
そこに当のジャンニ・スキッキとラウレッタが現れる。ジャンニは一瞬にして状況を見抜く。「関係のない人は出てっておくれ。持参金も持たない娘を一族の嫁になど認めないよ」とツィータが言うので、怒ったジャンニは帰ろうとする。そこでラウレッタが甘えた声で「お父様お願い、この人と結婚したいの。それができなければ私はアルノ川に身を投げるわ」と父親に懇願する。「私のお父さん」
娘にほだされたふりで、ジャンニは娘をバルコニーに追いやり、男達にブオーゾの遺体を隠すように命じ、女達には空になったベッドを整えるように言う。

そこに医者のスピネロッチョが往診に現れるので、作業は中断。遺体に掛け布団をかけて、まるで眠っているように見せておいて、ジャンニがブオーゾの声色で「今日はとても調子がいいんですが、とても眠いので夕方にもう一度いらしてくださいませんか」と言い、騙された医者は帰っていく。

そこでジャンニは「公証人を呼んでこい自分がブオーゾになりすまして新しい遺言書を作るのだ」と話す。親類達は準備をしながら、それぞれがそっとジャンニの耳元に自分が欲しい財産を囁いていく。外から教会の弔いの鐘の音が聞こえ、「ブオーゾの死が知れ渡ったのか」と全員がギクッとするが、それは金持ちの家の執事の死を告げるものだったとわかって皆ホッとする。ジャンニはさりげなく、全員に聞こえるように「この小細工がバレたら、関わった全員が手首を切られて、フィレンツェから追放されるのだ」と言って、彼らに脅しをかける。

リヌッチョが公証人と証人の靴屋と染物屋を連れてくる。ベッドの中にはブオーゾのナイトキャップと寝巻きを着たジャンニがいる。そしてブオーゾの声色で「葬儀は簡素でいい。そして遺言書を作り替えたい」と公証人に語り始める。そして財産を少しずつそれぞれの親戚たちに配る約束をする。最後にもっとも価値の高い、粉挽き小屋とラバ、そしてこの屋敷が残る。その分与となったときに、やおらジャンにはこう言い放つ「それらを私の親友、ジャンニ・スキッキに与える」。親戚たちが一斉に抗議をしようとするがそこでジャンにはすかさず「ここで悪事がバレたら、お前達も皆同罪だぞ」と囁くので、全員それ以上抗議することもできずに黙る。

公証人と証人たちが帰っていくと、一同が一斉に「ジャンニに騙された!」と言い、家の中の金目のものを持ち出そうとするが、ジャンニに「この館は私のものだ、とっとと出ていけ!」と一喝され、彼らは渋々去っていく。バルコニーでは若い二人が愛を語らっている。その様子を見ながら、ジャンニが客席に向かってこう語りかける。
「ご見物の皆様方、これ以上良いブオーゾの遺産相続がございましょうか。私の行いは地獄に堕ちるのが妥当でございましょう。しかしもし今夜皆様方が楽しんでくださったのでしたら、偉大なダンテのお許しを得て、何卒私に情状酌量をお願いいたします」と口上を述べて、客席に深々と頭を下げ挨拶をしたところで、このオペラの幕は下りる。
(河野典子)

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