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作品について

W.A.モーツァルト作曲「コジ・ファン・トゥッテ」
オペラ全2幕<字幕付き原語(イタリア語)上演>

大人のための “恋人たちの学校”
〜恋から学ぶ、人生の愉しみ方〜

 

 

イントロダクション

 藤原歌劇団が日生劇場とのコラボでお届けするのは、モーツァルト作品の決定版オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」です。今回はニュープロダクションでお届け致します。
 “ダ・ポンテ三部作”とも言われている「ドン・ジョヴァンニ」「フィガロの結婚」に続く本作は、「フィガロの結婚」の第1幕に登場する「女はみんなこうしたもの(Così fan tutte)」という歌詞が元になったと言われており、特筆すべきはモーツァルトの美しいアンサンブルによって物語と心情が見事にマッチした音楽で、瞬時に聴衆をその世界へ誘ってくれるでしょう。
 今回、フェラーラ出身の姉妹、フィオルディリージとドラベッラをそれぞれ、迫田美帆と山口佳子(7/1&3)、中畑有美子と高橋華子(7/2)で息の合ったアンサンブルにご注目ください。またその恋人たちのフェランドとグリエルモを、山本康寛と岡昭宏(7/1&3)、渡辺康と龍進一郎(7/2)という歌唱演技ともにこの作品に相応しい布陣を配しました。またこのオペラの実権を握る!?ドン・アルフォンソとデスピーナは、田中大揮と向野由美子(7/1&3)、小野寺光と河野めぐみ(7/2)という芸達者な出演者でお届けいたします。指揮は今最も勢いがあり、人気実力ともに好評を得ている川瀬賢太郎が藤原初登場。演出は数々の作品で好評を得ている演出家、岩田達宗の新制作となります。爽やかな梅雨明けと共に、モーツァルトの軽快な音楽を日生劇場にてお楽しみください。

見どころ・聴きどころ

 6名がみな個性的な《コジ・ファン・トゥッテ》だが、姉のフィオルディリージは生真面目な女性。第1幕のアリア〈岩のように私の心は動かない〉も、第2幕のアリア〈お願いです、愛しい人、私の過ちを許して〉も、堂々たる曲調で「揺らがぬ心」を主張する。
 しかし、妹ドラベッラは柔軟で積極的。アリアは短めできびきびしたテンポが多い。第1幕の〈不安が私をかき乱し〉は情熱たっぷりの一曲。第2幕の〈恋は盗人〉は浮き浮きとした胸の内を象徴する。
 一方、お手伝いのデスピーナはあけすけな口調が特徴的。第1幕の弾けたアリア〈男たちに貞節を望むのですって?〉も、第2幕で姉妹を諭すアリア〈女も15歳になれば〉も彼女のさばけた感を雄弁に表す。
 男性ではまず、青年軍人フェランドの名アリア〈愛のそよ風が〉(第1幕)にご注目を。持ち前の大らかさを優美に打ち出している。一方、同じ青年軍人でもグリエルモは気性の激しい男。2幕のフィナーレでは、彼が独りで毒を吐く姿が耳を惹く。
 なお、老哲学者ドン・アルフォンソは、斜め上から物事を観る姿勢が特徴的。しかし、第1幕の姉妹との小三重唱〈風よ穏やかに〉は、娘たちの純な心に彼が寄り添った優しい一曲として、耳を欹てて頂きたい。

あらすじ

第1幕 初演と同時代。フェラーラの出身で今はナポリに住む姉妹、フィオルディリージとドラベッラは青年軍人のグリエルモとフェランドと交際中。カフェテラスで、グリエルモとフェランドが恋人を自慢し合うと、老哲学者のドン・アルフォンソが「女性の貞操などアラビアの不死鳥のようなもの」と笑い飛ばすので、フェランドとグリエルモが苛立って、「恋人の姉妹の心が変わらないかどうか」、金を賭けて試そうという顛末になる。
 海辺の庭園では姉のフィオルディリージと妹ドラベッラが、愛する青年士官の美点をそれぞれ讃える。しかし、ドン・アルフォンソが顔を見せ、「あなた方の恋人たちが従軍する」と伝える。姉妹と青年たちはしばしの別れを悲しむ。
 小太鼓が鳴り響き、混声合唱〈軍隊生活は楽しいぞ〉とマーチのリズムで勇ましく歌い上げる。姉妹たちは涙しながら歌い始め、「手紙を書いて」と願うが、妹のドラベッラの方が「出来たら日に二回書いてね」とねだる。その後、青年たちを乗せた船が見えなくなるまで姉妹は見送り、ドン・アルフォンソと共に、恋人たちの無事を祈って美しい小三重唱〈風よ穏やかに〉を歌う。
 場面は姉妹の居室に変わり、小間使いのデスピーナが登場。姉妹たちが戻り、絶望の様子を見せるのでデスピーナが驚くと、ドラベッラが烈しく怒りだす(アリア〈不安が私をかき乱し〉)。しかし、小間使いは気にせず、蓮っ葉な物言いで、アリア〈男たちに貞節を望むですって?〉を歌い始め、「男性なんてみな同じ。同じやり方で彼らに仕返ししてやりましょう」と浮気を勧める。その後、彼女はドン・アルフォンソに買収され、「姉妹たちに別の男に興味を持たせる計画」に付き合うことになる。
 外国人に変装した青年たちがやってきて、姉妹にいきなり求愛。娘たちは珍客に戸惑い、激しく抵抗し。特にフィオルディリージは、長大なアリア〈岩のように私の心は動かない〉できっぱりと拒絶。ドラベッラも姉の態度に合わせて、その場を去る。その光景を目にしたフェランドは、恋人の勁い心を信じてアリア〈愛のそよ風が〉を歌う。
 しかし、次の場面では姉妹たちに男二人が改めて求愛。相手にされないと分かると小瓶を取り出し「砒素だ」と称して一気に呑み、「体が震える」と言って倒れる。慌てた姉妹が少し近づくが、ここで、心配するフィオルディリージをよそに、ドラベッラはいきなり「スタイルは素敵じゃない?」と言い始め、態度を軟化させる。そこに医者に変身したデスピーナが現れ、不思議な言葉を話して姉妹を煙に巻き、怪しげな磁石療法を披露。それで治ったふりをして男たちがキスを求めるので、姉妹は激怒し、大騒動で幕が下りる。

第2幕 デスピーナはアリア〈女も15歳になると〉を歌い、姉妹に浮気をけしかける。男たちが再び現れ、ドン・アルフォンソが間に入る形で、外国人の振りをする青年たちと姉妹が即席の新しい組み合わせで行動する。しかし、フィオルディリージは、戦地にいるはずの恋人への忠誠心を捨てきれず、アリア〈お願いです、愛しい人、私の過ちを許して〉を歌い、自分の心変わりを諫める。
 一方のドラベッラはアリア〈恋は盗人〉で「恋は誘惑の蛇よ」とあっけらかんと歌い進める。続いての二重唱〈胸に抱かれて〉では、面子にかけてフィオルディリージを口説き落としたいフェランドが決然と歌い始め、フィオルディリージもついに陥落。その後、ドン・アルフォンソが青年たちを諭し、「さあ、私と一緒に繰り返せ。女はみんなこうしたものなのだ!Così fan tutte!」と強弁。男性3人で〈Così fan tutte!〉と唱和して、オペラのテーマをアピールする。
 フィナーレが始まり、二組の結婚式の準備でデスピーナは忙しく働き、召使や楽師たちが混声合唱で「松明をともせ!」と明るく応じ、壮大に〈二組に祝福あれ!〉と歌い上げて男女4人を迎える。フィオルディリージが結婚に寄せる言葉を歌うとフェランド、ドラベッラも同じメロディを輪唱で歌い繋ぐが、グリエルモは独り、怒りを抑えきれず、「毒を飲めばいいのに!」と悪態をつく。
 この後、デスピーナが公証人に扮して現れ、おかしな声色を使いながら結婚の書類にサインを求める。4人が署名すると、舞台裏から〈軍隊生活は楽しいぞ〉コーラスが聴こえるので、娘たちは慌てふためき、男たちを逃がす。
 すると、変装を解いたフェランドとグリエルモが現れるので姉妹は狼狽。隠れていたデスピーナは「私は仮装舞踏会に行った帰りです」と臆面もなく言う。しかし、結婚証明書が見つかり、危機一髪というところで青年たちがからくりを明かすので、デスピーナを含め女性3人は「騙された!この心痛には耐えられない!」と呟く。しかし、男たちが赦そうという態度を見せ、ドン・アルフォンソも「さあ、笑おう」といなす。
 その結果、オペラの副題「恋人たちの学校」を4人が目出度く卒業したという体裁を取って、全曲の幕となる。

(岸 純信)

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