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  7. Vol.11-郡 愛子 2

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笑える日本オペラ『ミスター・シンデレラ』と、壮大な新解釈の『夕鶴』。

—今年度の作品は『ミスター・シンデレラ』と『夕鶴』ですが、この2作品を選ばれた理由としては、今郡さんがおっしゃったような「コンセプトを大切にして創っていく」ということが実践しやすい、という観点もあるのでしょうか。

まさにその通りです。この2作品をやろうと決めたのは、結構早いタイミングでした。これも大賀先生がおっしゃっていたことですが、「室内オペラ(少人数で構成される小規模なオペラ)をやってみてもらえないだろうか」というご依頼もありまして。『ミスター・シンデレラ』は元々室内オペラ用の作品ではないんですが、今まで日本オペラに興味がなかった方にも興味を持っていただけるような作品として、ちょっとやってみようかなと。理由としては、まず娯楽性が強いということ。とにかく軽快で楽しいんですけど、最後には、人間が何を大切にすべきかということを教えてくれる。これから先、笑いあり、涙あり、そして大切なことを教えてくれる作品をやっていきたいと思っていますが、この作品はまさにそれなのです。

−「笑いあり」というのは、もしかすると日本オペラにあまり持たれていないイメージかもしれませんね。どちらかというとシリアスな印象が強いですが、『ミスター・シンデレラ』には笑いがあるのですね。

笑えるのです。もちろん『春琴抄』や『天守物語』などは、誰もが認める後世に残すべき素晴らしい作品ですが、先ず日本オペラの新しいイメージを打ち出し存在感を広めていくという意味で、また特に小劇場の場合にはできるだけ親しみやすい作品を選んでいきたいと思いまして。『ミスター・シンデレラ』は、第一弾としてふさわしいと思います。全く笑ってしまうお話なんですよ。「ミジンコを研究している冴えない男が、ある朝冷蔵庫のドリンクを飲んだら赤毛の美女に変身してしまう。それは彼の奥さんが研究していた、女王蜂の性ホルモンエキスだった」という始まりで、それから色々なすったもんだがあって、結局彼は赤毛の美女として生きていくこともできるという状況になるのですが、もう一方で今までの冴えない男に戻るかどうかの選択肢に迫られ、彼はすごく悩むんです。その悩むシーンの音楽がすごく分かりやすくて、きれいなんです。東京初演の際、全国紙の文化面でもたいへん評価の高かった作品で、作曲家の伊藤康英さんは歌曲でもすごく感動的な作品を書いていますが、その美しい音楽にお客様がみんな涙するのだそうです。

−「ミジンコを研究している」という出だしから、面白そうなストーリーですね!

そうでしょう?それを今度、中井亮一さんと所谷直生さんというタイプの違うおふたりがドタバタを演じ、また女装するシーンもあったりして、でも最後は泣かせるんです。おふたりをご存知の方からしたら、絶対にやらなそうな役だと思うでしょう?だから、面白いと思って。私自身が今からすごくワクワクしていて、「早く見たい!」と思っているんです。指揮は坂本和彦さん、演出は松本重孝さん。おふたりは、鹿児島で上演されたときからこの作品を何度も手がけていらっしゃるので、お気持ちに余裕を持っていらっしゃるのではないかと思います。こういうオペラは、いい意味で遊びがないとね。そのほうが、お客様にも伝わりますから。ですから、早く10月が来ないかと今から待ち遠しい思いです。

郡愛子

−今から、とても楽しみですね!一方の『夕鶴』はいかがでしょうか?

『夕鶴』は、もう何回も何回も上演されている作品ですので、本公演で採り上げるにあたっては「話題性」というものを考えなければならず、それこそコンセプトをどうしようか、と気にかかっていました。そうしたら、今回は演出が岩田達宗さん、指揮が園田隆一郎さんなのですが、岩田さんがすごくこの作品への思い入れが強くて。「近年、この『夕鶴』という作品は「金銭欲に掻き立てられての裏切り行為」だとか、「約束事が守られなかったことに起因する悲劇」とか、そういう部分ばかりが強調されてしまっている。けれど木下順二さんの台本で元々いちばん大切だったテーマというのは、「摂理を超える願望・欲望の達成がもたらす結果が、取り返しのつかない悲劇になる」ということなのだそうです。ですから、今度の『夕鶴』では、この木下順二さんの台本の原点を踏まえて演出意図を際立たせ、「人間同士の恋など及ばない、凄まじい燃える恋を表現する必要がある」とおっしゃっているのです。すごいでしょう?これを聞いて、私はちょっと燃えました(笑)。私自身もこれまで『夕鶴』は何度も観てきているけれど、ここまで奥深い内容の作品だとは知らず、やはり民話としての美しい物語であると感じていたんです。でも岩田さんは、「生物の垣根を超える、激しい恋と破滅の物語を通して、真の豊かさを失っていく人間世界の終わりを暗示する、スケールの大きな作品として演出したい」とおっしゃるのです。

−本当に、そのコンセプト自体がとてもスケールの大きな構想ですね!

そう、そのコンセプトに私は惚れ込んだのです。岩田さんはご自身が「こうだ」と信じることは実践なさる方ですから、せっかく日本オペラ協会として『夕鶴』を採り上げるということもあり、岩田さんにやりきっていただければと考えています。園田さんにも、このコンセプトを十分ご理解いただければと思っていますし、歌手陣も名歌手ばかり揃えているのですが、みなさん喜んで「やりたい」とおっしゃってくれています。今までにない『夕鶴』ができるのではないか、岩田さんの演出がどのように形になるのかと、こちらは私が「ワクワク」というより「ドキドキ」している作品でもあります。

−まさに、日本のオペラを専門上演している団体としてふさわしい、存在感のある作品になりそうですね。

そうですね。本公演の第1作目としてふさわしいと思います。元々この作品は、1952年に当会の創設者である藤原義江先生が、藤原歌劇団として大阪で初演した作品なんです。藤原先生は洋物オペラの大スターでいらっしゃいましたけど、一方では「日本の歌を歌いたい。日本のオペラをつくりたい」ということもずっとおっしゃっていましたので、やはり日本オペラ協会と藤原歌劇団とは、切っても切れない深いご縁があるな、と感じております。そういったことも含めて、このたびは『夕鶴』を採り上げました。

−ご縁深い、魅力的な日本オペラの代表作なのですね。ゾクゾクするようなコンセプトで創る『夕鶴』、こちらも楽しみにしています。

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