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  7. Vol.13-牧野真由美 3

CiaOpera!

ナレーション、脚本家、ときどき「副交感神経デー」。文化活動の日々。

−牧野さんは、オペラへご出演のかたわら、日曜日の12時から放送されているTOKYO FMの『バスタルジア』というラジオ番組で、ナレーションのお仕事もされていらっしゃいますね。歌なしの、声だけで語るお仕事というのは珍しいのではないですか?

そうなんです!パーティーの司会やコンサートのMCでしゃべることはありますが、ナレーションだけということは初めてですね。

−声だけのお仕事はいかがですか?

これが、意外に楽しいんですよ(笑)!もっと緊張するかなと思ったのですが、薄暗くてコンパクトなスタジオで、ヘッドホンを付けて座ると、もう読む以外にないんですよね。すると、自分の集中力を引き出しやすくなるみたいで。グッと“世界に入り込む”という楽しさがあります。

−先ほど『ノルマ』にしても『ミスター・シンデレラ』にしても、お話を伺っていて役の研究が早くて的確でいらっしゃることに驚きましたが、この番組のナレーションも「バスで旅をする私」という1人称で語られているので、世界に入り込み、ある人物になりきって表現する点でオペラでの活動が活かされていますね。

そうですね、普段オペラでやっていることが活かされていますね。どこで呼吸をするかというフレージングを考えるという点も共通していますし、母音をクリアに発音して日本語をしっかり伝えるということも日本オペラと一緒ですね。

−逆にここはオペラと少し違う、と感じられる点はありますか?

声の高さや抑揚、テンポを自分で設定する点が最も違いますが、発音・発語の技術にも少し違いがあるかもしれません。私が普段歌うのはイタリア・オペラが多いので、あまり子音が強すぎるということはないかもしれませんが、それでもドイツ作品を歌う機会もありますし、同じように「s」とか「t」とかを強く発音してしまうと、ナレーションのマイクでは「リップノイズ」というものになってしまうんですね。難しいですよね。あと、「らりるれろ」が続いたりすると難しい、というような、アナウンサーの苦労のような部分が少し垣間見られますね(笑)。あと、練習ができず、その日スタジオ内のその場で読むというのが難しいですが、自由にイメージして自由にやらせていただけるという楽しさもあります。

−自由の楽しさ、ですか。

はい。オペラは、稽古を重ねて細かく細かくつくり込んでいく作業なので。それはそれで喜びがあるのですが、自由につくれるという楽しさは新鮮です。

牧野 真由美

2015年藤原歌劇団公演「ファルスタッフ」クイックリー夫人役 右は折江忠道

−そうなのですね。本当に、幅広く活躍されているのですね。牧野さん、オフの日というのはあるのでしょうか?

オペラに出演するとお休みはほとんどないのですけど(笑)、たまにあるお休みのことを私は「副交感神経デー」と名付けているんです(笑)。1日全部、本当にリラックスをして、体のメンテナンスに当てるんです。

−「副交感神経デー」というのは、面白いネーミングですね(笑)。

(笑)。歌の練習をずっとしていて、特に技術的に難しい曲なんかに取り組んでいますと、腰痛・肩こりであったり、足にも結構負担が来るんですよね。そういう疲れを、鍼灸治療に行って治していただくんです。普段は「今日はお腹の支えが入らない」とか「脱力できない」とか、主観的に自分の調子と向き合っているんですけど、体の表面に近い痛みや不調だけでなくて、内部の不調も客観的な目線で看ていただけるのがいいんですよね。

牧野 真由美

いつも通っている狛江の鍼灸院にて。首の懲りに鍼を打ってもらっています。

−鍼灸ですか!リラックスできそうですね。他に何かご趣味はありますか?

仕事が趣味のようなものですけれどね(笑)。芝居を観に行ったりはしますね。

−いわゆるストレート・プレイ(歌などの入らないオーソドックスな演劇)ですか?

はい、お芝居、好きですね。オペラの演出をされる方の、演劇作品を観に行ったりもします。上手な方がたくさんいらっしゃるので、オペラの役づくりの勉強になったりもしますね。あとは読書も好きです。移動が多いので、その間の時間で読みます。

−お好きな作品はなんですか?

なんでも読みますけど、つい最近読んだのは『ダヴィンチ・コード』の著者ダン・ブラウンの作品を読みましたね。それから浅田次郎さんの作品も好きです。文章の流れも好きですし、あと、よく取材されてらっしゃいますよね!感心します!自分で脚本を書くこともあるので、その勉強にもなっています。

−脚本も書かれるのですか?

そうなんです!お芝居のなかにオペラのアリアや重唱をはめ込んでいく、というオリジナル作品を、今のところ2本書いています。トリトン・アーツ・ネットワーク様からご依頼いただいて、オリジナルの芝居とコンサートを一緒に上演するというコンセプトでやったのです。大変でしたが、楽しかったですね!

牧野 真由美

「オペラの楽しみ」脚本・構成:牧野真由美 左は2015年、右は2013年のチラシ

−オフの日も、文化的な活動をされていらっしゃるのですね!

確かにそうですね!脚本を書いているときは、半年間毎日アイディアを練ったり、取材したり、書き進めたりで結局休みがなかったです!ですから、オンとオフというのは、グラデーションのようになっているかもしれませんね(笑)。性に合っているんだと思います(笑)。

−本当に合っていらっしゃるのですね。貴重なお話、ありがとうございました。

新企画<聞いてみタイム>♪アーティストからアーティストへ質問リレー

—今日は、前回インタビューしました小川里美さんから、牧野さんへの質問レターをお預かりしています。今回、小川さんからはふたつの質問が届いています。

今まで演奏されたことのない演目(あるいはコンサートピース)で、これからなさりたいものはありますか?

そうですね…たくさんありますが、私はヴェルディが大好きなので、今パッと浮かんだのは『トロヴァトーレ』の「アズチェーナ」という役ですね!『仮面舞踏会』のときに「ウルリカ」という役をやらせていただきましたが、その役と“姉妹”といわれることもあるアズチェーナ。トラウマを背負って、その怨みを晴らすために生きているという、エキセントリックな人物像にすごく惹かれるものがあって、いつか取り組めたらいいなぁと思っています。あとは…何でしょうね。歌ったことがあるけどもう一度歌いたい、という役はたくさんあるんですけど(笑)。

−『トロヴァトーレ』の「アズチェーナ」ですね!もう一度やりたい役は、例えばどんな役ですか?

そちらは逆にいっぱいありすぎて選びきれないんですが(笑)。ヴェルディのレクイエムは、もう一度歌いたいですね!あの曲は名曲ですし、メゾ・ソプラノにとっては、至福なんです(笑)。音楽的にもヴェルディのオペラの集大成である気がして、とても素晴らしい作品だと思います。あとは、ロッシーニの『オリィー伯爵』が好きでした!前回2014年の公演でシラグーザさんが完璧なテクニックで歌われて、そのうえにコメディーの演技が積み重なった、理想的なロッシーニの世界だったなという気がしていまして。またやってみたいです。

−それは、私もぜひ拝見したいですね!ありがとうございます。続いて、ふたつめの質問はいかがでしょう?

今となっては笑い話、というような、リハーサルや本番でのハプニングはありますか?

笑い話になっているようなハプニング!まだ笑い話になっていないものならあるんだけど(笑)!結構昔の話でもいいですか?

−もちろんです!

モーツァルトの『フィガロの結婚』に出演して、小姓の「ケルビーノ」をやったときのことなのですが。途中で大勢の村娘たちに混ざって、女装をするシーンがあるでしょう?そのとき、ワンピースの下のズボンを脱ぎ忘れちゃったんですよ(笑)。それで、ワンピースの裾からズボンが覗いたまま舞台に出てしまったんですが、何かの拍子に気付いたんです。で、とっさに、あえてスカートの裾を持ち上げて、「あ、やっちゃった!」という顔で満面の笑みで笑ってみたら、それがかえってお客さんにウケたんです(笑)。

−逆に功を奏したんですね!素晴らしいアドリブ力ですね!

そういうこともあるんだな、と思いました(笑)。本番はやり直しがきかないですから、ハプニングも利用してくしかない、という気持ちでしたね(笑)。でも、窓から飛び降りるというシーンに、舞台から客席に飛び降りるという演出がついていたんですが、そんなに高い段差でもないし稽古中は全然問題がなかったのに、本番では張り切りすぎてしまったみたいで。高く飛び上がりすぎて、着地でねんざしました。まさに、今になって笑えることですね(笑)。

−そのあとが大変だったのですね(笑)。お話、ありがとうございました!

取材・まとめ 眞木茜

PROFILE:牧野 真由美 Mayumi MAKINO

牧野 真由美

2013年藤原歌劇団公演
「仮面舞踏会」ウルリカ役

東京都出身。東京芸術大学卒業。同大学大学院修了。第3回藤沢オペラコンクール奨励賞、第30回イタリア声楽コンコルソ金賞受賞。
藤原歌劇団には、2008年帝国ホテル主催ジ・インペリアル・オペラ「セビリャの理髪師」のベルタを経て、2010年「カルメル会修道女の対話」マザー・マリーで本公演デビューを果たす。その後も「ルチア」アリーサ、「セビリャの理髪師」ベルタ、「フィガロの結婚」マルチェッリーナ、「夢遊病の女」テレーザ、「仮面舞踏会」ウルリカ、「オリィ伯爵」ラゴンド、「蝶々夫人」スズキ、「ファルスタッフ」クイックリー夫人に出演し、いずれも好評を博している。
安定した歌唱と優れた演技で幅広い役をこなし、サントリーホール・オペラ、サイトウキネンフェスティバル松本、まつもと市民オペラ、東京・春・音楽祭ほかで「魔笛」「カルメン」「ウェルテル」「アドリアーナ・ルクヴルール」「蝶々夫人」「ジャンニ・スキッキ」「オテッロ」「フィガロの結婚」等で活躍。
また「第九」、「メサイア」、ヴェルディ「レクイエム」、マーラー「復活」などのソリストとしても多くのコンサートに出演。また2013年、2015年とトリトン・アーツ・ネットワーク主催「オペラの楽しみ」で自ら脚本・構成を手掛け大好評を得ている。
長野県小諸高等学校、フェリス女学院大学、昭和音楽大学非常勤講師。藤原歌劇団団員。

今後のスケジュール

ノルマ ミスター・シンデレラ
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