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  7. Vol.15-西村 悟 2

CiaOpera!

音楽でも演技でも、字幕を見なくても伝わるほどの説得力を『ルチア』に。

—今回、役のレパートリーも、大変幅広いですね。

そうですね。これは僕の個人的な意見ですが、自分で限界を決めるのをやめようと思っているんです。よくある「この曲は重いからやめておけ」「この役は軽いから君の声には合わない」という話は、もちろん尺度としてあるとは思うんですが、最終的に僕自身が決めればいいことだな、と。まだ歌ってもいないうちからそれを決めてはいけないな、という考えになってきて、いろんなものを試してみようと。僕は自分の持っている声、自分の持っている技術でその役を歌いますが、それがいいかどうかはお客様がお決めください、というスタンスになってきたのです。好きな方は好きだし、「ちょっと違うね」という方はそれでもいい。だから、ドイツものも歌うし、フランスものも歌うし、ロシアものも歌うし、何でも歌ってみようかなと。また、正直、リサイタルの方がオペラよりも集中力が必要だと思うんです。いろいろな感情を演じ分けなければならないので。しかも、全部見せ場じゃないですか。オペラでは自分の見せ場といったらひとつかふたつですけど、リサイタルの歌は場面的にも全部が山場だから、大変ですね。でも、やりがいはあります。

西村 悟

2013年 藤原歌劇団公演「ラ・トラヴィアータ」アルフレード役

−12月に出演される『ルチア』(『ランメルモールのルチア』とも呼ばれる)のアリアも予定されていますが、これは公演を視野に入れた選曲ですか?

そうです。リサイタルの曲を決めるとき『ルチア』の出演も決まっていたので、ぜひ歌いたいと思ったのです。

−この『ルチア』のエドガルドという役は、もう何度か歌われているのですか?

イタリアの小さな劇場で歌ったことはあるんですが、大きいホールの演奏のプロダクションで歌うというのは初めてです。

−そうなのですね。音楽づくりや役づくりで、今考えていらっしゃる構想などはありますか?

実は、僕はこういったベルカントものを歌うのは初めてなんです。今まで藤原歌劇団で演じたのは『椿姫』『蝶々夫人』『仮面舞踏会』ですが、それらとはまたちょっと時代が違うんですよね。ですから、僕自身正直まだスタイルが分からない部分もあるので、指揮の菊池彦典さんや演出の岩田達宗さんとディスカッションし、勉強させてもらいながらやっていきたいというスタンスでいます。

西村 悟

2015年 藤原歌劇団公演「仮面舞踏会」リッカルド役

−『ルチア』という作品は、主役はルチアという女性ですが、男性らしいところのある作品ですよね。

そうですね、敵対する家同士の政治的な話が絡んでいるからでしょうね。それから終わり方も少し特殊で、面白いのです。ヒロインが死んでしまったあとも話が続き、その恋人の死で最後を締めくくるという。

−確かにそうですね!では、フィナーレはエドガルドの見せ場ですね。

そうしたいですね。また、ルチアと歌う二重唱も、後のルチアの見せ場「狂乱の場」へつながる大事な場面です。この作品では、いかにお客様をルチアに同情させるかが大事だと思います。そのために、エドガルドとの恋がいかに幸せか、エンリーコの思惑といかに相容れないかを表現するのは共演者の責任でもありますし、そういう意味で「この曲でなにを伝えるか」というテーマを決めると整理できていいかな、と考えています。それと、六重唱もいいんです!あれは最高ですよ!六重唱でどう盛り上がるかというのも、ポイントですね。

−なるほど、見どころが盛りだくさんですね!西村さんは、演出家の方や共演者の方と、稽古中からすごく会話をされると伺いました。

実は、芝居がすごく好きなんです。究極的に、オペラって、字幕がなくても伝わるように出来ていると思うんですよ。たとえイタリア語が分からなくて、何を歌っているのか細かい内容は分からなくても、たとえば『ルチア』なら、なんとなく素敵で、美しくて、ふたりの男女が熱い恋をしていて、でも引き離されて悲しくて死んでしまったんだろうな、ということぐらいまでは分かると思うし、歌い方やしぐさでそこまで説得力を持たせて伝えるというのが歌手の責任だと思う。そういうことを細かく追究していくのが、僕は好きなんです。変な言い方かもしれませんが、いい歌を歌っているときはそのお芝居ができているし、いい芝居をしているときはそういう歌が歌えている。歌が思うように歌えないなと感じるときには、逆に感情からつくってみたりするといい歌になったりする。ただ歌うだけでなく、感情を楽譜から汲み取ることが大事で、それを表現するからこそ芝居が生きてきて、人物がどう感じているかや、どういう関係なのかがお客様に伝わると思います。

西村 悟

2015年 藤原歌劇団公演「仮面舞踏会」リッカルド役(左) 左は小川里美

−楽譜から、感情も汲み取るのですか。

はい。楽譜に書いてあります。だから、僕はよく演出家と話すんです。右へ行くとか、左へ動くとか、じゃあなぜそのように動くのかというその理由が知りたいのです。僕は本当はこう感じているから動けない、けれどなかには、演出の都合上しょうがないこともある、じゃあどうやって気持ちをつくろうか、ということをすり合わせていくんです。ただ単に動くのは、嫌なのです。そうやって、役づくりをしていくんです。それで声の音色も、所作もずいぶん変わるものですよ。

−なるほど、それが演出家の方と話をされる理由なのですね。

共演者の方とも、もちろんそういった話をします。今回、ルチア役の坂口裕子さんは初めましてですが、エンリーコの谷さんやライモンドの東原さんなどとはご一緒していますね。指揮者の菊池さんとご一緒するのは初めてですが、マエストロとももちろん会話します。そこは、まず大前提ですね。演出家と話す立ち稽古より前の音楽稽古で、どう音楽をつくるかを話すと、だいたいの演技プランも想像がつく。コンサートでもオペラでも、準備がすべてなのです。

西村 悟
ルチア
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