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  7. Vol.17-党 主税 3

CiaOpera!

オペラは「人」を知れる。電撃的に出会ったあのときから、ずっと挑んできた。

−日頃から、奥様と共に高め合っているな、という部分はありますか。

そうですね、普段からほとんど歌の話ばっかりしているんですよ。そういう意味でも「一緒につくってきた」といえるんでしょうね。

−ほとんど歌の話なのですね!

そうなんです。たとえば趣味でも、「歌のためにはこれをやったほうがいいんじゃないか」という観点から始めるので、結局趣味の話をしていても歌の話になっていたりします。

−ちなみに、ご趣味はなんですか?

今、「合気道」をはじめとする古武術にはまっています。もう6、7年になるかな。それも、最初は「舞台で動ける体をつくる」という目的で始めて。やり始めると、それはそれとして面白くなってくるのですが。

−古武術だと、結構声を出されるのではないですか?そこがオペラに生きるのでしょうか?

気合いを入れるときは、「えいっ」とか「とうっ」とか腹から声を出しますけど、それが舞台に生きているかどうかは全く未知数ですね(笑)。でも、体のためにと思ってやっていたけど、もしかしたら心を鍛えているのかもしれない、と思うことはありますね。はじめは、「古武術のこの部分は、舞台にこういう風に使えるのでは」と、舞台に生かせるようなことを探すつもりでやってみたけれど、それはちょっと姑息な気がして。あとから考えたり、もしくは人が見たときに「あ、これはもしかしたらこの部分が生きているのかもしれない」と気づくことはあるかもしれないけど、あまり自分から意識的にキャッチしようとしすぎると、かえって身体的にも良くなくて。それよりもむしろ、強い相手と組むときはやっぱり恐怖心も起こるので、逃げない気持ちだったり、集中力だったり、「揺るがない心」とかそういったものを育んでいるように思います。

−「揺るがない心」は、確かに舞台にも生きそうですね。オペラは、ご自身が出演されないものを普段から観に行かれることはありますか?

最近はあまりなくて、むしろオーケストラや楽器をよく聴きます。歌は、勉強しようとしてしまって、なんだかダメですね(笑)。

−心から楽しめないのですね(笑)。どんな楽器を聴かれるのですか?

そうですね、フルートや古楽器、それからジャズも聴きます。また、演劇もよく観に行きます。さっきもお話しましたが、オペラは音楽が支えてくれる部分があるけど、それなしで台詞を覚えて、またその台詞のイントネーションや間合いもその時々で変えたりしながら舞台をつくる俳優さんたちってすごいな、と尊敬します。ジャズのように、即興で演奏できる人のような凄さを感じます。

−異なる表現方法から刺激を受けるのですね。ところで、党さんは大学時代、なかなか興味深い分野を専攻されていたのですね。

よく聞かれます(笑)。教育学部の心理臨床科ですね。これは、僕が高校のころにさかのぼるんですが、進路を決めるときに自分は何に興味があるかな、と考えて「“人”に興味があるな」と漠然と思ったんです。それで、どこに行けば“人”が勉強できるかと探したときに、心理学だと思ったのです。そして進学し勉強してみたら、なんとなく自分が思い描いていた“人”の勉強とは少し違うように感じた。そんな日々を過ごすなかで、4年生のときに大学のオペラ・サークルに誘われて。そのときはまだ、「なんですか、オペラって?」みたいな感覚でしたが。同じ心理学科の女の子がそのサークルに参加していて、僕が当時ギターを弾きながら流行歌などを熱唱していたのを見て歌が好きと思われたのかもしれません。「男の子が足りないから手伝って」と声をかけられて、友達とふたりで「じゃあ思い出づくりにやります」なんて言って演じたのが、いきなり『カルメン』の「エスカミーリョ」。今から考えると、ひどい話ですよね(笑)。

党 主税

信州大学オペラ・サークルにて「カルメン」エスカミーリョ役で出演した一コマ

でも、とにかく『カルメン』とはどういうものかと映像をひたすら観て勉強し、舞台制作も全部自分たちでやらなければならなかったから、大道具つくって、小道具をつくって、チラシをつくって、演出も自分たちでつけて…と、オペラをゼロからつくっていくうちに、「これだ!」というものがあった。さっきの話につながるかもしれないけれど、「エスカミーリョ」というあるひとりの人物を演じていることが、僕には“人”の勉強をしているように思えたんです。「あ、僕がやりたかったのはこういうことだったのかもしれない」と、ストンと腹落ちした。それで、最初にお話した大城先生に「オペラがやりたいです」と相談したのです。

党 主税

後ろの建物は、学生時代、練習に明け暮れた信州大学の音楽練習棟

−オペラで「人」を知れる!それは、とても衝撃的な気付きでしたでしょうね。

すごく衝撃的な出会いでした。そのあと、先生には一度「他の学校の音楽部を受けてみなさい」なんて断られたりしたんですけどね(笑)。でも、巡りめぐって結局先生について、カバン持ちから始めさせてもらったんです。

−人生は何が出会いになるか、本当にわかりませんね。

本当ですね。でもそんなスタートだったから、藤原歌劇団の研修所に入って、コンクールやオーディションも本当にたくさん受けて、とにかくどんどん自分に自信をつけていかなければいけないな、という切迫感はずっとあったんです。気は強かったので、「ダメでもともとだ!」と自分なりに勇気を奮ってここまで進んできたのですが、今回の「オペラ新人賞」を頂いたとき、「どうしよう、認められてしまった…」と、その重責に思わず身震いしてしまいました。ずっとチャレンジャーだったので。よく考えたら、認めていただいても、これからもチャレンジャーであり続けることに変わりはないのですけどね。

−受賞が、党さんにとってとても大きな、大切な意味を持っていたのですね。

そうですね。本当に大きかった。その重みを受け止めて、じっくり向き合い、ここまでの自分の道のりをお見せできる準備ができた。それが、今回のリサイタルなのかもしれません。

−素晴らしいオペラとの出会いの物語をお聞きしたあとのリサイタル。これは、行かずにはいられません。

党 主税

新企画<聞いてみタイム>♪アーティストからアーティストへ質問リレー

—さて、今回の質問リレーは、前回お話をお聞きした坂口裕子さんからのものです。

イタリア留学時代に、いちばん思い出に残っていることは何ですか?

少し漠然としてしまうかもしれませんが、いちばん最初にミラノに着いたときに感じたのが、建物がすごい!ということでした。昔からある建物に、今の人たちが住んでいる。ミラノはイタリアのなかでは新しい建物が多い方ではありますが、それでもドゥオーモや教会などは何百年も前からちょっとずつ建ててきたものだし、それが自然に現代の生活のなかにあるということにすごく感銘を受けたんです。建物のなかを改造して、人が普通に住んでいたりとか、ホテルになっていたりとか。この歴史のつながり感、歴史が流れてきた先に今自分がいるということが、改めて考えるまでもなくごく普通であるっていうことがなんだか羨ましかった。だからイタリア人って、自分の国にすごく誇りを持っているのだなぁ、と。歴史のなかに生きていることが目に見えて感じられたことが、自分自身の具体的なエピソードではないのですが、「思い出」といわれて思わずパッと浮かんでしまうことですね。

党 主税

−とてもインパクトがあったのですね。

本当に印象が強かったです!

−考えてみれば、オペラもそうですね。

そうですね。何百年も前の作品が、歌い継がれ、今でも普通に上演されているという。とにかく、歴史の衝撃が大きかった、ということですかね。

−ありがとうございました!

取材・まとめ 眞木茜

PROFILE:党 主税 Chikara TO

党 主税

2009年 藤原歌劇団公演
「愛の妙薬」
ドゥルカマーラ役

信州大学教育学部心理臨床科卒業後、同大学音楽科声楽研究生を経て、日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第20期生修了。平成14年度文化庁新進芸術家国内研修員。平成18年度文化庁派遣芸術家在外研修員としてイタリアのミラノに留学。日本クラシック音楽コンクール入賞。大城康宏、柴山昌宣、牧野正人、G.ロールミの各氏に師事。
2001年オペラ振興会オペラ育成部修了公演「イル・カンピエッロ」のアストルフィでオペラデビュー。日本オペラ協会には、03年「美女と野獣」の天邪鬼でデビュー。国民文化祭・ふくおか2004で「仮面舞踏会」シルヴァーノに出演、その後も「愛の妙薬」ベルコーレ、「フィガロの結婚」アルマヴィーヴァ伯爵等、多数のオペラに出演し好評を博している。
藤原歌劇団には、「イル・カンピエッロ」アンゾレートでデビューし、「ラ・チェネレントラ」「リゴレット」「蝶々夫人」「ラ・ジョコンダ」「愛の妙薬」などにも出演。また、仙台オペラ協会「ラ・ボエーム」ショナール、オペラ彩/和光市文化振興公社主催「ドン・ジョヴァンニ」タイトルロール、「アドリアーナ・ルクヴルール」ミショネで成功を収める。また、日本オペラ団体連盟人材育成オペラ「ヘンゼルとグレーテル」ペーターに出演。15年イタリア、レッチェ市ポリテアーマ・グレーコ劇場に「蝶々夫人」ボンゾで出演、好評を博した。その他、「第九」等多数のコンサートに出演。
第11回北九州パドロニーニ選考会最優秀賞。第18回五島記念文化賞オペラ新人賞受賞。藤原歌劇団団員。福岡県出身。

今後のスケジュール

五島記念文化賞オペラ新人賞 党 主税リサイタル
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