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作品について

ドニゼッティ作曲

オペラ全2幕 字幕付き原語上演

イントロダクション

藤原歌劇団は、第8回川崎・しんゆり芸術祭“アルテリッカしんゆり2016”のオープニング公演として、ベルカント・オペラの名作「愛の妙薬」を上演します。
折江忠道総監督の就任第一弾となる本公演で、国内外で数多くのコンクールに入賞して注目を集めている宮里直樹(T)と岡昭宏(Br)が、当団公演へのデビューを飾ります。
アディーナには、抜群の表現力で不動の人気を誇る高橋薫子と、昨年「ラ・トラヴィアータ」で大成功を収め、進境著しい光岡暁恵。ネモリーノは当団きってのプリモ・テノールの村上敏明と宮里直樹が、ドゥルカマーラは、この役に初挑戦の谷友博(Br)とこれからの成長が楽しみな新進バス=バリトンの田中大揮が、それぞれダブルキャストで務めます。ベルコーレに当団本公演に初登場の月野進(Br)と岡昭宏(Br)、ジャンネッタには経験豊富な河野めぐみ(Ms)と若手成長株の丹呉由利子(Ms)らを配した、藤原歌劇団の現在そして未来を担うキャストで臨む公演です。
指揮は、イタリア・オペラのスペシャリストとしての位置を確立しつつある園田隆一郎。彼は昨年12月にイタリア・トリエステのヴェルディ歌劇場で、このオペラを振って好評を博したばかりです。
そして演出は粟國淳。1997年に粟國が演出家としてのデビューを果たしたのがこの「愛の妙薬」で、彼にとっては記念すべき懐かしい舞台。オーソドックスで美しい舞台装置が、楽しくてちょっぴりセンチメンタルなこのオペラに華を添えます。

見どころ・聴きどころ

甘く切ないテノールのロマンツァ〈人知れぬ涙〉が、このオペラの中では特に有名ですが、同じくネモリーノが第1幕冒頭で、アディーナに見惚れて歌う「なんて美しい!なんと愛らしい!」も純朴な青年そのものの美しいカヴァティーナ。一方、第1幕でベルコーレが、アディーナに花を捧げて歌う「パリスが気取って」は、いかにも軍曹らしい凛々しい歌です。
アディーナが、第2幕でネモリーノへの想いを自分から告白する「受け取って、これであなたは自由よ」は、優美なメロディ・ラインを持つアリアで、聴く人の心を捉えます。また、披露宴の場面の劇中劇として、アディーナがドゥルカマーラと歌って演じる、ヴェネツィアのゴンドラ漕ぎの娘ニーナと上院議員の恋物語の舟歌のメロディは、怪しい旅の薬売りのドゥルカマーラが、立て板に水の見事な口上を披露する華やかなフィナーレのアリア「この薬はなんでも治します」で再登場します。この場面は過去数々の名バッソ・ブッフォたちが競って演じてきたドゥルカマーラの独壇場ともいえる聴かせどころです。

あらすじ

【第1幕】
スペイン・バスク地方のとある農村。裕福な農場経営者のアディーナは、刈入れ作業をひと休みしている農民たちと離れたところで本を読んでいる。内気な村の青年ネモリーノは、美しい彼女のことを遠くからうっとりと見つめるばかり。アディーナは、村の娘たちに本を読んで聞かせながら「イゾッタ(イゾルデ)を一瞬にしてトリスターノ(トリスタン)の虜にしたという媚薬(愛の妙薬)があるのならば、その作り方を知りたいものだわ」と言う。
そこに太鼓の音がして、軍曹のベルコーレと、村の駐屯部隊の兵士たちがやって来る。ベルコーレはアディーナに花束を差し出し、求婚する。はっきりしないネモリーノに業を煮やしたアディーナは、なんとその求婚を受けてしまう。
そこに派手な風体の怪しい旅の薬売りドゥルカマーラとその一行が馬車で到着。ネモリーノに「イゾルデが恋に落ちたという薬はないか」と尋ねられたドゥルカマーラは、すかさず「これこそがその薬!これを飲めば、明日には村じゅうの娘たちがお前さんに夢中になるぞ」と愛の妙薬(実はただの安物の赤ワイン)を売りつける。それを飲んで、明日こそアディーナが自分を好きになってくれると期待に胸を膨らませるネモリーノだが、ベルコーレとアディーナが今日結婚すると聞いて、大慌てでドゥルカマーラに助けを求めに走っていく。

【第2幕】
婚礼披露も宴たけなわ。ご馳走をひとり食べ続けるドゥルカマーラのところにネモリーノがやってきて「なんとか今日中に薬が効くようにしてほしい」と頼み込む。「お金を払えば、もう一本売ってやる」と言われたネモリーノ。その話を聞いたベルコーレは、これは恋敵を追い払えて一石二鳥とばかり、彼に軍隊への入隊を勧める。さっそくその話に乗ってお金を得たネモリーノは、もう一本“妙薬”(=安ワイン)を買い、一気に飲み干す。
中庭ではジャンネッタをはじめとした村の娘たちが「ネモリーノの裕福な伯父さんが亡くなって、彼に莫大な遺産が転がり込むらしい」とうわさ話をしている。そこへやってきたネモリーノのことを彼女たちはこれまでと違ってチヤホヤするので、彼は「薬が効いてきた」と大喜びする。その様子を見たアディーナは、意外な事の成り行きに驚きを隠せない。
ネモリーノが、村娘たちに囲まれた自分を見てアディーナが涙ぐんでいたことを思い出して「彼女は僕のことを愛しているんだ」と幸せを噛みしめているところにアディーナが来て「このお金で準備金を返して軍隊に入るのはやめて、ここにいてちょうだい」と、彼女の方からネモリーノに愛を告白する。長年の恋が成就したネモリーノは「これは愛の妙薬の効力だ!」と大喜びする。
ドゥルカマーラは「恋が成就したのは、わしの売ったこの愛の妙薬のおかげ」と吹聴ながら、皆に見送られて賑々しく去っていく。
(河野典子)

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