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作品について

ベッリーニ作曲

オペラ全2幕 字幕付き原語上演

イントロダクション

ベルカント・オペラの女王マリエッラ・デヴィーア(S)が、自身の日本におけるオペラ舞台の集大成として選んだのが、ベッリーニ作曲の「ノルマ」です。
ベッリーニ独特の流れるような美しいベルカント・スタイルを崩すことなく、巫女の長であり、母親でもあるノルマ役を表現することは、並大抵の技術ではできません。愛するポッリオーネの心が若い巫女のアダルジーザに移った現実に直面し、女として、母として、葛藤する複雑な心をベルカントというスタイルの枠の中で描き出さねばならないのです。そこが「ノルマ」がベルカント・オペラ屈指の難役と言われるゆえんです。ダブルキャストで臨む今回の日生劇場の公演では、近年国内のオペラ公演で人気を集める小川里美(S、7/2)が、この大役に果敢に挑戦します。
アダルジーザ(Ms)は、2006年のフィレンツェ歌劇場、2013年ミラノ・スカラ座の来日公演の「ファルスタッフ」でメグを演じて好評を博した、イタリアのラウラ・ポルヴェレッリ(7/1&4)と藤原歌劇団期待の新人である米谷朋子(7/2)。ポッリオーネ(T)に藤原歌劇団の新世代のプリモ・テノールとなりつつあるふたり、笛田博昭(7/1&4)と藤田卓也(7/2)。オロヴェーゾ(Bs)には公演のたびに新境地を開く、伊藤貴之(7/1&4)と、大抜擢の田中大揮(7/2)という布陣で臨みます。
指揮は、イタリアのフランチェスコ・ランツィッロッタ。ランツィッロッタはローマ生まれ。同地のサンタ・チェチーリア音楽院で指揮とピアノを、ニューヨークとマドリードでも指揮を学び、すでにイタリア各地の主要歌劇場での活躍が始まっています。今回、デヴィーアの推挙により起用が決まったイタリア・オペラ界のホープです。
演出は、粟國淳。端正な舞台をどうぞお楽しみに。

見どころ・聴きどころ

この作品でもっとも有名なのが、第一幕でノルマが歌う「清らかな女神よ」です。このカヴァティーナはベッリーニ独特の長いフレーズを滑らかに歌った上で、ノルマというひとりの女性が抱える複雑な状況や心の揺れを表現せねばなりません。
同じ第一幕のポッリオーネの勇ましいカヴァティーナ「私と共に愛の神の祭壇に」とカバレッタは、リリコ・スピントのテノールの声の聴かせどころ。
また、このオペラでは重唱が大きな位置を占め、ノルマとアダルジーザによる「ご覧なさい、ノルマ」、「ええ、最期の時まで」は、コンサートでもよく取り上げられます。
また「お前はついに私の手中に落ちました」に始まるフィナーレは、それぞれの登場人物の心情が見事に描かれた、ベッリーニ作品の白眉とも呼べる部分です。

あらすじ

【第1幕】
古代ローマに征服されたガリア地方のケルト人たちは、知識層ドルイドに導かれ、オークの古木とそれに寄生するヤドリギを信仰の象徴として崇めている。
月夜の聖なる森。ドルイドの長オロヴェーゾがドルイドたちを伴って現れ、オロヴェーゾの娘で巫女の長ノルマの口からローマに復讐する時を告げる神のお告げがあることを待っている『畏れ多き神よ、お告げを』(オロヴェーゾ)。
彼らが去った後ローマの地方総督ポッリオーネが腹心のフラーヴィオと現れる。ポッリオーネは秘密裏にノルマと愛し合い、ふたりの子供までもうけている。だが彼の心は、今や若き巫女のアダルジーザに移っており、彼は何としてもアダルジーザを連れてローマへ戻り、彼女と結婚するのだと語る『私と共に愛の神の祭壇に』(ポッリオーネ)。
オロヴェーゾやドルイド、そしてケルトの人々が戻って来る気配にポッリオーネたちはその場を去る。人々が神木であるオークの木を中心とした祭壇の周囲に集まる。そこにノルマが姿を現し「まだローマ征伐の時ではない」と語り、人々の興奮を鎮めた上で、神に祈りを捧げる『清らかな女神よ』(ノルマ)。だがローマ人のポッリオーネを愛するノルマの心は複雑である。祈祷が終わって人々が去っていくが、そこに若い巫女のアダルジーザがひとり残る。彼女は道ならぬ恋に悩んでいる。そこにポッリオーネが姿を現し、自分と一緒にローマに逃げようと誘う。ためらうアダルジーザにポッリオーネは「ならば私をお前たちの神の生贄にするがいい」と迫り、アダルジーザは思い悩む『いくがいい、酷い人よ』(ポッリオーネ、アダルジーザ)。


ローマに召喚されたことを自分に言わないポッリオーネの態度に漠然とした不安を抱くノルマのところに、道ならぬ恋に悩むアダルジーザが相談に現れる。彼女の話を聞いたノルマは我が身と照らし合わせて思い出に浸りつつ、アダルジーザを元気づける『ああ、思い出よ』(ノルマ、アダルジーザ)。しかし、そこにポッリオーネが現れ、ふたりが同じ男を愛していると知る。ポッリオーネはアダルジーザをローマに連れ去ろうとし、ノルマは彼の不実を責める。アダルジーザは自分が命を絶ってポッリオーネをノルマに返すと言う『震えるな、不実な者よ』(ノルマ、アダルジーザ、ポッリオーネ)。
三人が言い争う中、ノルマを呼ぶ聖なる鐘の音が聞こえる。ノルマは儀式のために神殿へと向かい、アダルジーザはポッリオーネの腕を振り払って走り去り、ポッリオーネも怒りながらその場を去る。

【第2幕】
絶望したノルマは、子供たちを道連れに死を選ぼうとする。しかしどうしても可愛い子供たちを手に掛けることが出来ない。ノルマはアダルジーザを呼び、「この子たちを一緒にローマに連れて行ってお前が育てておくれ」と頼む。ノルマが死を選ぼうとしていることを知ったアダルジーザは彼女を押しとどめる『ご覧なさい、ノルマ』(アダルジーザ、ノルマ)。アダルジーザはポッリオーネをノルマのもとに戻すことを約束し、ふたりは互いの友情を確かめ合う『ええ、最期の時まで』(ノルマ、アダルジーザ)。
森の近くでは、兵士たちがローマ人征伐への命令を待っている。オロヴェーゾが「まだノルマの口から神のお告げがない。今しばらくの我慢だ」と彼らに語る『ああ、ローマ人に支配され』(オロヴェーゾ)。
イルミンスルの神殿ではノルマが、ポッリオーネがアダルジーザに説得されて自分のもとに戻ってくることを待ちわびている。しかし侍女のクロティルデからポリオーネはアダルジーザの説得に首を縦に振らないと聞かされたノルマは激昂し、祭壇に駆け上がって銅鑼を3回叩き、人々に「ローマへの復讐の時が来た」と伝える。
アダルジーザを連れてローマに逃げようとしたポッリオーネが捕えられて、神殿に連行されて来る。ノルマは「裏切り者が誰なのか、私が尋問する」と言って人払いをし、ポッリオーネに改心を迫る。しかしポッリオーネはそれを聞き入れず、「自分を殺してくれ、ただ子供たちとアダルジーザの命は助けてやってくれ」と懇願する『お前はついに私の手中に落ちました』(ノルマ、ポッリオーネ)。
ノルマが人々を呼び戻し「裏切り者がわかりました。それは私、ノルマです」と告白し、驚くオロヴェーゾや人々の前で、ポッリオーネに「私と共に死ぬのです」と言う『どんな心を裏切ったのか』(ノルマ、ポッリオーネ、オロヴェーゾ、合唱)。彼女の毅然とした態度にポッリオーネは心打たれ、自らの行いを後悔して彼女とともに処刑されることに同意する。
ノルマは涙ながらに父オロヴェーゾに子供達の行く末を託し、ポッリオーネとともに火刑台へと歩を進める『どうか、あの子達を犠牲にしないでください』(ノルマ、ポッリオーネ、オロヴェーゾ、合唱)。
(河野典子)

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