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作品について

ドニゼッティ作曲

オペラ2部(全3幕) 字幕付き原語上演

イントロダクション

藤原歌劇団は、ベルカント・オペラを当団の重要なレパートリーと位置付けています。昨年はドニゼッティ「愛の妙薬」「ドン・パスクワーレ」、ベッリーニ「カプレーティ家とモンテッキ家」を上演しました。そして今年は、7月のベッリーニの大作「ノルマ」に続いて、12月にドニゼッティの代表作「ルチア」を上演します。
今回のルチア(S)には、当団のベルカント・オペラには欠かせないプリマへと成長した光岡暁恵と、昨年の「ドン・パスクワーレ」で好評を博した坂口裕子を配しました。エドガルド(T)には、韓国大邱(テグ)出身で、ミラノ・スカラ座研修所を修了し、ヨーロッパ各地の劇場でロドルフォ、マントヴァ公爵、アルフレードなどを歌って注目を浴びているジェイ・クォンと、こちらもイタリアで学び、「ラ・トラヴィアータ」「蝶々夫人」「仮面舞踏会」などで次々に主役を務めてきた西村悟という気鋭の二人が出演します。また、ミラノとパルマで学び、ヴェルディ・コンクール第1位、オペラリア・コンクール第2位などの華々しいコンクール入賞歴を持ち、パルマのレージョ劇場でのルーナ伯爵、リゴレットをはじめ、ヴェルディ・バリトンとして世界各地で活躍してきた韓国ソウル出身のカルロ・カンが、安定した表現力を誇る谷友博とのダブル・キャストで、ルチアの兄エンリーコ(Br)を演じます。
そのほか、ルチアの相談相手であるライモンド(Bs)に伊藤貴之/東原貞彦、政略結婚の相手アルトゥーロ(T)に小笠原一規/曽我雄一、侍女アリーサ(Ms)に河野めぐみ/二瓶純子、家臣ノルマンノ(T)に小野弘晴/青柳明。
指揮はイタリア・オペラのエキスパート、菊池彦典。演出は、2011年にこの舞台で好評を博した岩田逹宗。伝統ある藤原歌劇団の「ルチア」にどうぞご期待ください。

見どころ・聴きどころ

何と言ってもこのオペラの主役は、ルチア(S)。そしてこの作品でもっとも有名なのは第2部の第2幕(終幕)の彼女の〈狂乱の場〉です。ベルカントの高い歌唱技術と、常軌を逸し、弱っていくルチアという女性の悲しみと危うさを表現しなければならない、15分以上続くソプラノ・リリコ・レッジェーロの見せ場です。またそのあとに続く、ルチアに裏切られたと思い込んだエドガルド(T)が人生に絶望して我が身の死を願う〈我が祖先の墓よ〉も、リリコのテノールによって、しばしば演奏会でも歌われる有名なアリアです。そのほか〈狂乱の場〉でもそのメロディが繰り返される第1部の最後にある「燃える吐息はそよ風にのって」、第2部第1幕の「このような時に誰が私の怒りを抑えられよう」といった美しい重唱もあちこちに散りばめられています。

あらすじ

【第1幕】別れ
〈第1幕〉
16世紀末のスコットランド。ランメルモール(ラマムーア)地方を支配するアシュトン家の娘ルチアは、以前この地を支配していたレーヴェンスウッド家の生き残りであるエドガルドと密かに愛し合っている。アシュトン家の家臣ノルマンノは城内の者たちに命じてその証拠をつかもうとする。
ルチアの兄、エンリーコは没落の危機に瀕した家を救うために妹を政略結婚させようと企てているのだが、妹がその縁談に首を縦に振らないことに苛立っている。
ルチアの相談相手でもある修道士のライモンドは、ルチアの秘密の恋を知っているがそれは口にせず、エンリーコに「ルチアはまだ母上を亡くした悲しみから立ち直っていないのだ」と彼女を庇う。そこでノルマンノがルチアとエドガルドの恋を告げ口するので、エンリーコは怒りを露わにする。カヴァティーナとカバレッタ「冷酷で、不吉ないらだちを〜彼女のために哀れみを乞うても」(エンリーコ)


深夜、ルチアが侍女アリーサと庭にある古い泉のそばに立って、エドガルドが現れるのを待っている。ルチアはアリーサに「ある暗い夜更けに、昔この泉で殺された女性の亡霊が見えたの。その女性は私を手招きして、そして消えました。そのあと泉の水が血の色に染まっていたのです」と話す。エドガルドとの恋に不吉な予感がするアリーサが、ルチアにこの恋を諦めさせようとするが、彼女は「あの方との恋が私の全てなのです」と語る。シェーナとカヴァティーナ「あたりは沈黙に閉ざされ〜激しい情熱に心を奪われた時」(ルチア)。
そこにエドガルドが現れて、彼がスコットランドの窮地を救うためにフランスに向かうことになったことを告げる。二人は密かに結婚の誓いを立てて、互いの指輪を交換する。二重唱「裏切られた父の墓の前で〜燃える吐息はそよ風にのって」(エドガルド・ルチア)

【第2部】婚約
〈第1幕〉
エンリーコの居室。エンリーコは、何としても妹にアルトゥーロとの政略結婚を承諾させようとする。家臣のノルマンノはエンリーコに「エドガルドが他の女性に心を移したという偽の手紙を準備してあります」と告げ、ルチアを呼びに行く。
ルチアが部屋に入って来る。兄にエドガルドからの偽の手紙を見せられたルチアは、それを信じてしまい、悲しみに打ちひしがれる。その上「この家とこの兄を救うのはお前しかいない」とエンリーコに強く迫られたルチアは、アルトゥーロとの結婚を承諾する。二重唱「こちらへおいで、ルチア」(エンリーコ・ルチア)
アルトゥーロの到着の知らせに、エンリーコは彼を迎えるためにその場を去る。
ルチアは、入れ替わりにやってきたライモンドから、自分が書き送った手紙がエンリーコの邪魔立てでエドガルドの手元には届いていないことを聞かされ、一族のためにこの結婚を受け入れるように諭される。アリア「諦めなさい、さもなければ一層の不幸が」(ライモンド)。ルチアは「私はこの運命を受け入れるほかないのだ」と悲しみに暮れる。

広間でアルトゥーロとルチアの結婚式が始まり、ルチアが婚姻証書にサインをする。そこに突如エドガルドが現れる。ルチアが他の男との結婚を承諾したと聞いたエドガルドは、彼女の裏切りを責めて彼女と交換した指輪を突き返し、自分の指輪を取り返す。エドガルドの怒りと、兄に騙されたことを知ったルチア、せっかくの結婚式をエドガルドに汚されたと憤慨するエンリーコらの思いが交錯する。四重唱「このような時に誰が私の怒りを抑えられよう」(エドガルド・エンリーコ・ルチア・ライモンド)一触即発のエドガルドとエンリーコの間にライモンドが割って入る。居合わせた人々に追い立てられるようにしてエドガルドは去って行き、ルチアは気を失って倒れる。

〈第2幕〉
外は嵐。レーヴェンスウッド家に唯一残された、朽ちかけたヴォルフェラグの塔の中では、ルチアの裏切りに打ちひしがれたエドガルドが一人佇んでいる。彼の前に、怒りの収まらないエンリーコが現れ、彼らは翌朝のレーヴェンスウッド家の墓地での決闘を約束する。二重唱「アシュトン! そうだ、エドガルド」(エドガルド・エンリーコ)

屋敷の広間では、まだ招待客たちがさんざめいている。そこに顔面蒼白なライモンドが飛び込んで来る。そして彼は、ルチアが寝室でアルトゥーロを刺し殺し、不気味な微笑みをたたえている様子を話す。それを聞いた人々は恐怖におののく。グラン・シェーナ「やめろ!喜ぶのはそこまでだ」(ライモンド・合唱)
そこに血だらけのネグリジェ姿のルチアが現れる。彼女の常軌を逸した様子に人々は神の慈悲を願う。ルチアは、彼女だけに見えるエドガルドに彼と結婚できる喜びを語りかけたかと思うと、今度は現実に引き戻されて悲しみに打ちひしがれる。屋敷に戻ってきたエンリーコは、その尋常ならぬ妹の様子に愕然とする。ルチアはエドガルドの腕の中で死ぬことを望みながら、弱っていく。アリアとカバレッタ「あの人の声の優しい響きが〜苦い涙をそそいで下さい」(ルチア)〈狂乱の場〉

レーヴェンスウッドの墓所。エドガルドは我が身の不幸を嘆き、「明日には自分も先祖とともにここに葬られるであろう」と絶望とルチアへの断ち切れぬ想いを語る。そこに館の中から悲しみに暮れた人々が出て来る。そして、ライモンドからルチアの死を聞かされたエドガルドは、自らの胸に短刀を突き立ててルチアのあとを追う。アリア「やがてこの世に別れを告げよう〜翼を広げ、神に向かって飛び立ったお前」(エドガルド)〈我が祖先の墓よ〉
(河野典子)

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