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作品について

モーツァルト作曲

オペラ全2幕 字幕付き原語上演

イントロダクション

藤原歌劇団は、日生劇場、横須賀芸術劇場との共同主催として、28年ぶりにモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」を上演することとなりました。藤原歌劇団は1948年12月に帝国劇場でこのオペラを日本初演しており、今回はそれから数えること7回目の上演となります。
今回タイトル・ロールには、バス歌手としての最盛期を迎え、モーツァルト作品の中でも特にこのドン・ジョヴァンニ役を得意としているイタリアのニコラ・ウリヴィエーリ(6/30&7/3,7)と、2017年の当団公演「ルチア」でも好評を博したカルロ・カン(7/1)をダブルキャストで据えました。ドン・ジョヴァンニと常に行動を共にする従者レポレッロには押川浩士(6/30,7/7)、田中大揮(7/1,3)。ドン・ジョヴァンニに父を殺されるドンナ・アンナに小川里美(6/30,7/7)、坂口裕子(7/1,3)、その婚約者ドン・オッターヴィオに小山陽二郎(6/30,7/7)、中井亮一(7/1,3)。自分を捨てたドン・ジョヴァンニを恨みつつも愛するドンナ・エルヴィーラに、佐藤亜希子(6/30,7/7)、佐藤康子(7/1,3)。また、村娘ゼルリーナと婚約者のマゼットには、清水理恵と宮本史利(6/30,7/7)、梅津貴子と大塚雄太(7/1,3)。石像になってドン・ジョヴァンニに復讐する騎士長には豊嶋祐壹(6/30,7/7)、東原貞彦(7/1,3)といったキャストでお送りします。
スタンダードな舞台で毎回好評の岩田逹宗の演出によるニュープロダクション。指揮は名テノールとして日本でも人気を博したジュゼッペ・サッバティーニが、藤原歌劇団に初登場。知的な歌唱で知られたサッバティーニが、モーツァルトのオペラでどのような棒さばきを見せるかにも注目が集まります。

見どころ・聴きどころ

このオペラの登場人物たちには、それぞれ聴かせどころがあります。ドン・ジョヴァンニは、彼の奔放な性格をよく描き出しているアリア〈シャンパンの歌〉、ゼルリーナとの小二重唱「手に手を取って」やセレナードであるカンツォネッタ「窓辺においで」などの甘いメロディでも知られています。従者レポレッロは、ドン・ジョヴァンニが口説いた過去の女たちの名前を書き連ねたリストをドンナ・エルヴィーラに見せながら歌うアリア「カタログの歌」で有名です。ドン・オッターヴィオの第1幕アリアの「彼女の心の平穏に」は、ウィーンでの初演で差し替えられたもの。第2幕のアリア「私の大切な人を」とともにモーツァルトのテノールの代表的なアリアとして知られています。女声陣では、ドンナ・アンナが第1幕で婚約者に父の復讐をと願うアリア「もうお判りですわね」、第2幕で婚約者からの求婚を待って欲しいと語るロンド「もう何も仰らないで、愛しい方」、ドンナ・エルヴィーラが歌う第1幕のアリア「ああ、卑怯者からお逃げなさい」や第2幕のアリア「あの恩知らずは私を裏切り」からは、彼女の勝気な性格とともにドン・ジョヴァンニへの断ち切れない深い愛情が見てとれます。ゼルリーナには、恋人マゼットに甘く歌いかける「ぶってよ、マゼット」、ドン・ジョヴァンニにひどく打ち据えられたマゼットの嫉妬深さをたしなめつつ歌う〈薬屋の歌〉というチャーミングなアリアがあります。またアリアこそありませんが、石像になった騎士長がドン・ジョヴァンニをこの世から連れ去る場面は〈ドン・ジョヴァンニの地獄落ち〉と呼ばれ、このオペラの最も劇的な見せ場となります。

あらすじ

【第1幕】
騎士長の館の前。ドン・ジョヴァンニの放蕩ぶりと、それにいつも付き従う我が身の苦労を従者のレポレッロが嘆いている。導入部「夜も昼もあくせく働いて」そこに館からドンナ・アンナの悲鳴が聞こえ、マントで顔を隠したドン・ジョヴァンニがドンナ・アンナともみ合うように出てくる。ドンナ・アンナは無謀にも彼女の部屋に忍び込んだ不埒な男の正体を見破ろうとしているのだ。娘の叫び声に剣を手に父親である騎士長が出て来るので、ドンナ・アンナは加勢を呼ぶために館の中に走り込んでいく。騎士長は不埒な侵入者に決闘を挑むが、あえなく返り討ちに遭う。虫の息の瀕死の騎士長を残して、ドン・ジョヴァンニとレポレッロが去る。ドンナ・アンナが、婚約者のドン・オッターヴィオや召使いたちを連れて戻ってくるが、そこにこと切れた父親を見つけて気を失う。気がついたドンナ・アンナはドン・オッターヴィオに「私のために父の復讐をすると誓って」と訴えかける。二重唱「立ち去って、むごい方よ」

早速次の女性に会いに行こうとするドン・ジョヴァンニと従者のレポレッロだが、そこでジョヴァンニが「何やら女性の薫りがする」と言い始める。その通り、そこに旅姿の美しい女性がやってくる。それはドン・ジョヴァンニに捨てられて、彼を追ってやってきたブルゴスの貴婦人ドンナ・エルヴィーラだった。アリア「あのひどい男はどこに」
声をかけたドン・ジョヴァンニはそれがドンナ・エルヴィーラであることに驚き、やっとのことでドン・ジョヴァンニを見つけたドンナ・エルヴィーラは堰を切ったように恨み言を並べる。それに閉口したドン・ジョヴァンニは、レポレッロに「彼女をどうにか追い払え」と言って、彼を前に押し出し、自分は素早く逃げる。
その場を凌がねばならなくなったレポレッロは、ドン・ジョヴァンニの数多き女性遍歴を書き連ねたカタログをエルヴィーラの目の前で広げ、彼が真剣に愛するには値しない男であることをわからせようとする。アリア「お若いご婦人、これがカタログです〈カタログの歌〉」
彼女がショックを受けている間にレポレッロも姿を消し、残されたドンナ・エルヴィーラはドン・ジョヴァンニへの復讐を誓う。

村人たちが集まって、ゼルリーナと農夫マゼットの結婚を祝っている。そこに通りかかったドン・ジョヴァンニは早速ゼルリーナに目をつけ、村人たちを館に連れて行って歓待するようレポレッロに言いつける。ゼルリーナを伴って行こうとするマゼットに、ドン・ジョヴァンニは「彼女は後で私が連れて行くから大丈夫だ」と言ってマゼットを追い払う。マゼットは、ブツブツ言いながら追い立てられるように村人たちとともに去る。アリア「わかりましたよ、旦那」
ゼルリーナとふたりきりになったドン・ジョヴァンニは早速甘い言葉で彼女を口説き始め、彼女もその甘い言葉にほだされる。小二重唱「手に手を取って」
そこにドンナ・エルヴィーラが現れて、「こんな男を信じてはいけないわ」と言い、ゼルリーナを連れて去る。アリア「ああ、この裏切り者から」
「今日は何もかもうまくいかない」とドン・ジョヴァンニが呟いているところにドンナ・アンナとドン・オッターヴィオが現れて、まさか目の前にいるのが騎士長を殺した犯人とも思わず、彼に父親殺しの犯人捜しに力を貸してくれるように頼む。そこに再びドンナ・エルヴィーラが現れてドン・ジョヴァンニを指差して「この男を信用してはなりません」と語る。ドン・ジョヴァンニは「この女は頭がおかしいのです」と言い逃れようとするが、ドンナ・アンナたちにはドンナ・エルヴィーラが嘘を言っているようには思えない。
ドンナ・エルヴィーラのことをやっとのことで追い払ったドン・ジョヴァンニは、慇懃に挨拶してその場を辞する。だが、その声にドンナ・アンナは聞き覚えがあった。父を殺した男がドン・ジョヴァンニだと気がついたドンナ・アンナは、ドン・オッターヴィオに前夜の事件の詳細を話して、何としても復讐してほしいと言い募る。アリア「もうお判りですわね」
ドン・オッターヴィオは、ドン・ジョヴァンニへの嫌疑が彼女の思い違いでなければ、愛する人の心の平安のために命をかけて復讐をすると誓う。アリア「彼女の心の平穏に」

レポレッロの前にドン・ジョヴァンニが現れるので、レポレッロは彼の命令通りに村人たちに酒や食べ物を振舞って、マゼットの気を散らすように努力をしたこと、ところがゼルリーナが、なんとドンナ・エルヴィーラと姿を現したこと、ドン・ジョヴァンニの行状を喚き散らすドンナ・エルヴィーラをなんとか屋敷の外に連れ出して、道に置き去りにしてきたことを報告する。それを聞いたドン・ジョヴァンニは「館に来ている村人たちをもっと酔わせ、踊らせて、その間に村娘たちを10人は我が物にするぞ」と語る。アリア「ワインで頭が熱くなるほど酔わせて〈シャンパンの歌〉」

館の庭では、村人たちが酔いつぶれている。そこにゼルリーナとマゼット。ドン・ジョヴァンニになびきかけたゼルリーナに腹を立てているマゼットの機嫌をゼルリーナがとっている。アリア「ぶってよ、マゼット」
嫉妬心に駆られたマゼットの機嫌はなかなか直らず、ゼルリーナとふたり口喧嘩になっているところに、ドン・ジョヴァンニがやってきて客たちを館の中の舞踏会へと誘う。庭の木陰に隠れようとしたゼルリーナを見つけたドン・ジョヴァンニは、甘い言葉で口説こうとするが、目の前にマゼットが現れて一瞬面喰らうものの、何事もなかったように彼のことも一緒に館の中へと誘う。

館の前に仮面をつけたドンナ・アンナ、ドンナ・エルヴィーラ、ドン・オッターヴィオが現れる。レポレッロから素性の知れぬ仮面の貴族の到来を告げられたドン・ジョヴァンニは、彼らを館に招き入れるようレポレッロに命じる。3人はそれぞれ正義の復讐がなされることを神に祈る。

舞踏会の開かれている広間は華やかな騒ぎ。ドン・ジョヴァンニに招き入れられた3人は慇懃に礼を言う。
ダンスが始まる。レポレッロが嫌がるマゼットを無理やり踊りに誘い彼の気を逸らしている間に、ドン・ジョヴァンニはゼルリーナに踊りに誘う。ゼルリーナが部屋から連れ出されるのに気がついたマゼットがゼルリーナの後を追う。賑やかなダンスが続く中、突如ゼルリーナの悲鳴が聞こえて、その場は騒ぎになる。そこに当のドン・ジョヴァンニが現れて、「狼藉を働いたのはこのレポレッロだ。私の手で成敗してやる」と言いながら、レポレッロの首根っこを捕まえて彼に刃を向ける。そこでドンナ・アンナたちが仮面を取り、「そんな茶番は通用しない」とドン・ジョヴァンニを責める。ドン・ジョヴァンニが「混乱して何をどうしたら良いのかわからないが、俺は何者をも恐れることはない」と言い放ったところで、第1幕が終わる。

【第2幕】
危うくドン・ジョヴァンニにあらぬ罪を着せられて殺されそうになったレポレッロは、暇乞いをするが、ドブロン金貨4枚をもらって結局はこのまま彼に仕えることになる。日が暮れ始めた窓辺からドン・ジョヴァンニのことをいまだに忘れられないドンナ・エルヴィーラの歌が聴こえている。その下ではドン・ジョヴァンニが、レポレッロの後ろに隠れて彼女への偽りの愛を語る。ドン・ジョヴァンニが改心したのだと思い込んだドンナ・エルヴィーラが降りてくる間に、ドン・ジョヴァンニはマントや帽子をレポレッロと取り替え、彼は自分になりすましてドンナ・エルヴィーラを連れ出すように言いつける。レポレッロのことをドン・ジョヴァンニと思い込んだドンナ・エルヴィーラが彼と共に去ると、ドン・ジョヴァンニは部屋にいるであろうドンナ・エルヴィーラの侍女に向かって甘いセレナードを歌う。カンツォネッタ「さあ、おいで窓辺に、愛しい人よ〈窓辺においで〉」
そこへ武器を手にしたマゼットと村人たちが、ドン・ジョヴァンニを懲らしめるべくやってくる。レポレッロのマントを着ていることを幸いに、ドン・ジョヴァンニはレポレッロになりすまし、「ドン・ジョヴァンニは女とあっちに逃げていった」と言って彼らをうまく追い払うが、マゼットだけは自分と共に留め置く。アリア「あなた方の半分はこちら」
残ったマゼットにドン・ジョヴァンニは何をするつもりかを聞く。ドン・ジョヴァンニを痛めつけて殺すのだと言いながら武器を見せるマゼットをこれでもかと打ち据えて、ドン・ジョヴァンニは去っていく。
そこにマゼットを探しにきたゼルリーナが現れ、痛めつけられて倒れているマゼットを見つける。事の次第を聞いたゼルリーナは、彼の怪我が大したことはないのを確認した上で「ヤキモチを焼くからこんなことになるのよ」と彼をたしなめ、「いいお薬をあげるわ」と甘く語りかける。アリア「いいこと、愛しい人〈薬屋の歌〉」

こちらはレポレッロとドンナ・エルヴィーラ。暗闇の中、道に迷った彼らは、なんたることかドンナ・アンナの館に迷い込む。レポレッロはドンナ・エルヴィーラに自分の素性がバレないうちに逃げたいと願う。そこにドンナ・アンナとドン・オッターヴィオが話しながら現れる。彼らに見つからず、やっと出口を見つけたと思ったレポレッロは、そこでゼルリーナとマゼットに出くわして全員に見つかってしまう。そこにドンナ・エルヴィーラが飛び出して、愛する人への慈悲を乞う。そこでレポレッロが自分はドン・ジョヴァンニではないと白状する。六重唱「たったひとり暗闇で」
レポレッロは5人に許しを乞いつつ、隙をついて逃げ出す。アリア「ああ、お情けを」
ドン・オッターヴィオはそこに居る者たちに、自分がドン・ジョヴァンニを殺して皆の復讐を果たすと宣言する。アリア「私の大切な人を」
ドンナ・エルヴィーラは、怒りに震えながらもまだドン・ジョヴァンニに憐憫の情を感じる複雑な気持ちを語る。アリア「あの恩知らずは私を裏切り」

真夜中の墓地。そこにはいくつかの騎馬像や騎士長の像が見える。そこに現れたドン・ジョヴァンニは、いつも通りに何事もなかったように機嫌が良い。そこに這々の体で逃げてきたレポレッロが合流し、二人はマントや帽子を交換して本来の姿に戻る。ドン・ジョヴァンニは、その夜、声をかけた女の話をレポレッロにする。それはレポレッロの恋人で、彼女がすんでのところで相手がレポレッロではないことに気付いて、騒いだので、この墓地へと壁を乗り越えて逃げ込んだのだ、と笑いながら話す。そこに「お前が笑うのも夜明け前までだ」という声が聞こえる。声がした方に騎士長の像を見つけたドン・ジョヴァンニは、レポレッロに石碑に書かれた文言を読ませる。そこには「私を殺した残忍な輩への復讐をここで待つ」と書いてあった。ドン・ジョヴァンニは、ならば石像を晩餐に招待しよう、と言い、それをレポレッロに伝えさせる。恐怖に震えながらレポレッロがそれを伝えると、石像は承諾する。

こちらはドンナ・アンナの館。ドン・オッターヴィオの求婚に対し、ドンナ・アンナは哀しみの癒えぬ今はまだ考えられない、と拒絶する。アリア「仰らないでください、愛しいお方」
ドン・オッターヴィオは彼女の気持ちに寄り添うことを誓う。

ドン・ジョヴァンニの館では、晩餐の用意が整い、楽師たちが音楽を奏でている。ドン・ジョヴァンニの旺盛な食欲にレポレッロは呆れ、自分もつまみ食いを始める。そこにドンナ・エルヴィーラが再び現れ、ドン・ジョヴァンニに改心を迫るが相手にされず、去ろうとして恐怖の叫び声をあげる。様子を見に行ったレポレッロが真っ青になって戻ってきて石像の来訪を告げる。ノックの音が聞こえ、レポレッロは恐怖のあまりテーブルの下に隠れる。仕方なくドン・ジョヴァンニが扉を開けに行くと、そこには石像が立っていた。入ってきた石像はドン・ジョヴァンニに、「今度は自分が彼を晩餐に招待しよう」と言い、その招待を受けたドン・ジョヴァンニに、その証の握手を求める。石像は冷たい手でドン・ジョヴァンニの手をぐっと握り、最後に「悔い改めよ」と再度言うが、ドン・ジョヴァンニはそれを拒む。騎士長は、ドン・ジョヴァンニを地獄に引きずりこむようにして彼を伴って消える。〈ドン・ジョヴァンニの地獄落ち〉

静かになったドン・ジョヴァンニの館にドンナ・アンナ、ドン・オッターヴィオ、ドンナ・エルヴィーラ、ゼルリーナ、マゼットが復讐のために現れ、ドン・ジョヴァンニの姿を探す。隠れていたレポレッロが出てきて、今ここで起きたことを説明する。
彼らはドン・ジョヴァンニに天罰が下ったことを知る。ドンナ・アンナはドン・オッターヴィオの求婚に「あと1年待って欲しい」と答え、ドンナ・エルヴィーラは「修道院に入る」と語る。ゼルリーナとマゼットは「家に帰ってふたりで夕食にする」と言い、レポレッロは「旅籠に行って次のご主人を探すことにしよう」と語る。そして全員が「これこそが悪人の末路。不実な者にはその生き方相応の死が与えられる」と歌って、オペラの幕は下りる。
(河野典子)

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