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作品について

プッチーニ作曲
オペラ全3幕 字幕付き原語(イタリア語)上演

サンタンジェロ城に星は光りぬ

歌に生き、愛に生きた、強くも儚い美しき歌姫の悲しい運命

 

 

イントロダクション

 藤原歌劇団が新春にお届けするのは、プッチーニの言わずと知れた名作「トスカ」。今回はこのオペラを、ニュープロダクションにてお届けいたします。
 プッチーニの5作目のオペラとして書かれた本作は、19-20世紀を代表するヴェリズモオペラで、残酷な運命に囚われ、激動の世に翻弄されたトスカを、叙情的な音楽と情熱的なドラマの融合によって描いたオペラ史上に残る傑作の1つです。
 今回は、ローマの有名なプリマ・ドンナであるタイトルロールのトスカを、新国立劇場でも同役の代役を務め絶賛された小林厚子(1/28,2/4)と、今回が藤原歌劇団の本公演に本格デビューとなる佐田山千恵(1/29)が務めます。トスカの恋人で自由思想を持つ画家のカヴァラドッシを、2020年「カルメン」ドン・ホセや2021年「清教徒」のアルトゥーロなど幅広いレパートリーで観客を魅了する澤﨑一了(1/28,2/4)と、藤原歌劇団のプリモテノールとして活躍を続けている藤田卓也(1/29)が演じます。また、彼らの運命を大きく揺れ動かす警視総監のスカルピアには折江忠道(1/28,2/4)と須藤慎吾(1/29)、スカルピアの陰謀によって無実の罪を着せられた脱獄者アンジェロッティに伊藤貴之(1/28,2/4)と東原貞彦(1/29)と、実力派の布陣を配しました。
 指揮は、オペラ指揮者として着実に実力を積む鈴木恵里奈が東京フィルハーモニー交響楽団(東京公演)、セントラル愛知交響楽団(愛知公演)を牽引します。演出は、その作品の真髄を表現これまで数多くの作品で好評を博す松本重孝による新制作です。
 新たな1年の幕開けに、心揺さぶるオペラ史上の最高傑作をぜひご堪能ください。

見どころ・聴きどころ

 「トスカ」は《映画音楽の祖》と呼ばれるオペラ。スリリングな響きが次々現れる。
 第1幕:冒頭の〈スカルピアのモチーフ〉がまずは強烈。画家カヴァラドッシのアリア〈妙なる調和 Recondita armonia〉では、「トスカ!」と呼びかける高いB♭音が、愛情の高まりを象徴する。甘美な愛の二重唱では、歌声が最後にユニゾンになり、心を一つに。一方、スカルピアのモノローグ〈行け、トスカ!Va, Tosca!〉では、情欲の念が合唱団の祈祷句と対照的に響きわたる。
 第2幕:トスカとスカルピアの対決では、歌姫の叫びが耳を貫く。カヴァラドッシは、ナポレオンの勝利に興奮。劇的な一声〈勝利だ Vittoria!〉を放つ。トスカのアリア〈歌に生き恋に生き Vissi d’arte, vissi d’amore〉は、愛情と信仰に生きる彼女の本質に根差す一曲。スカルピア刺殺の幕切れでは、彼のモチーフが変形しながら何度も響き、魂が現世を離れるさまを描く。
 第3幕:〈牧童の歌〉は一時の安らぎをもたらす素朴な曲。カヴァラドッシのアリア〈星は光りぬ E lucevan le stelle〉では、クラリネットの愁いの音色が思いを膨らませる。恋人たちの〈再会のデュエット〉では、「愛の勝利の宣言」が高らかに歌われるが、画家は銃声に斃れ、歌姫は投身自殺で最後の抵抗を示す。

あらすじ

【第1幕】
 1800年のローマ。サンタンドレ・デッラ・ヴァッレ教会内。アッタヴァンティ侯爵家の礼拝堂に、政治犯アンジェロッティ(B)が逃げこむ。堂守(B)が現れ、仕事中の画家マリオ・カヴァラドッシ(T)に対して、「貴方が描いたマグダラのマリア像が、礼拝に来る女性(実はアンジェロッティの妹、アッタヴァンティ侯爵夫人)に似ていますな」と言う。そのことはカヴァラドッシも認め、そのうえで、アリア〈妙なる調和 Recondita armonia〉を歌い、「名も知らぬ女性は青い目だが、愛するトスカの瞳は黒い」と恋人トスカを讃える。堂守は「ヴォルテール主義者は国の敵だ」と呟き、出てゆく。
アンジェロッティが現れ、親友カヴァラドッシがいると気づく。カヴァラドッシは友アンジェロッティの力になるが、自分の恋人の歌姫フローリア・トスカ(S)の声が外から聴こえてくるので、慌ててアンジェロッティを物陰に隠す。トスカが登場、「誰かの話し声が聞こえたわ」と嫉妬し、愛の二重唱〈面白くない言い方ね Non la sospiri la nostra casetta〉になる。カヴァラドッシは恋人を早く外に出そうとするので、トスカはそれに気づき、彼の態度に鋭く反応しつつも、最後にはカヴァラドッシに甘える言葉をかけたうえで、「絵の女性の眼を黒くして頂戴ね」と何度も口にして、ようやくその場を去る。
 カヴァラドッシは友を別荘に逃がそうとするが、脱獄者捜索の合図の砲声がするので、そのままアンジェロッティと一緒に逃亡。ナポレオン敗北の知らせに堂守が唱歌隊とはしゃぐ。そこに警視総監スカルピア男爵(Br)が現れる。礼拝堂の扉が開いていると気づいた彼は、画家と歌姫の間に先ほどまで何があったのか、そのすべてを見通す。トスカが現れる。そこでスカルピアは彼女の嫉妬心を煽り、捜査に役立てようとする。彼女の尾行を部下のスポレッタ(T)に命じた彼は、自らの邪まな情欲をソロ〈行け、トスカ!Va, Tosca!〉で歌い上げる。

【第2幕】
 ファルネーゼ宮殿内、スカルピアの居室。部下シャルローネ(Br)と手筈を打ち合わせる彼の前で、戻ったスポレッタが報告し、脱獄犯の代わりにカヴァラドッシを連行。スカルピアが尋問を始めると、手紙で呼び出されたトスカが現れる。カヴァラドッシは拷問室に連れ去られる。トスカはうろたえ、スカルピアをののしる。
 スカルピア男爵は脱獄者の行方をトスカに対して詰問。恋人カヴァラドッシの呻き声がするので、トスカは思わず「(別荘の)井戸の中に...」と口走る。傷を負ったカヴァラドッシが引きずりだされるが、ナポレオン戦勝の報に〈勝利だ!Vittoria!〉と叫ぶ。スカルピアは彼を処刑すべく、部下に連れて行かせる。残されたトスカは、男爵が自分の体を狙っていると知る。
 悲嘆にくれる彼女は、アリア〈歌に生き、恋に生き Vissi d’arte, vissi d’amore〉を切々と歌い、「自分はこれまで一身に祈りを捧げて参りました」と神に慈悲を乞う。彼女は、男爵の申し出に応じると無言でうなずいたのち、恋人の無事を要求する。スカルピアはスポレッタに、「パルミエリ伯爵の時にやったように」と偽の銃殺刑を命じる。トスカは男爵に通行許可証を書かせるが、その際、食卓の鋭利なナイフに気づき、それまでの怒りが一気にこみ上げる。
 結果、トスカはスカルピアを衝動的にナイフで刺してしまい、〈これがトスカの接吻よ! Questo è il bacio di Tosca!〉と叫ぶ。スカルピアはそのまま絶命。トスカは彼の手から許可証をもぎ取り、部屋を出て行く。

【第3幕】
 サンタンジェロ城。夜明け前の羊飼いの少年(Boy-SopranoまたはS)の歌が聞こえる。カヴァラドッシは看守(B)に「遺書を書かせて欲しいのだ」と頼み込み、恋人への想いを手紙として綴る(アリア〈星は光りぬ E lucevan le stelle〉)。すると、スポレッタがトスカを連れてくるので彼は驚く。
トスカはスカルピアを殺したと告白。逃亡の手はずを整えたから、偽の処刑が済めば自由になると告げる(二重唱〈ああ、フローリア・トスカへの通行許可証 Ah! Franchigia a Floria Tosca〉)。陽光が差し始めるなか、処刑時間になったので、カヴァラドッシは刑場に赴く。銃声で彼が倒れるのを見届けたトスカは、兵士たちが去ってから恋人のもとに駆け寄る。しかし、カヴァラドッシは既に絶命しており、トスカは騙されたと知り、泣き叫ぶ。追ってきたスポレッタやシャルローネの前で、トスカは〈スカルピア、神の御前で! O Scarpia, avanti a Dio!〉と叫び、城壁を飛び越えて空中に身を躍らせる。

(岸 純信)

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