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- Vol.32-迫田美帆 1

藤原歌劇団デビューにして大役「蝶々夫人」。
楽しみながら、どんどん進む。
『蝶々夫人』のタイトルロール「蝶々夫人」。藤原歌劇団のデビューでの大役に「いいのかな?」と思うこともあるけれど、初めてだからこそ思い切りできることもきっとある。芯の強さと10代のかわいらしさを併せ持つ蝶々さんを、表現しよう。日本の美しさが詰まった舞台を、素晴らしい共演者やスタッフの皆さんとつくれる幸せを、「楽しもう」。大学の声楽科卒業後は、会社に勤めながら歌の道を模索。音楽に理解のある職場で、自分を伸ばせる学びの場や先生と出会い、どんどん自分で切り開いてきたから、今がある。
初めてだからこそ、思い切り。芯が強くかわいらしい「蝶々さん」を。
−まずは、4月28日にご出演の『蝶々夫人』のお話を中心に伺っていきたいと思います。迫田さんは今回、『蝶々夫人』のタイトルロール「蝶々夫人」を演じられますね!やはりいろいろな思いが胸中におありだと思いますが、今のお気持ちはいかがでしょうか。
このような大役をいただいたことに正直不安もありますが、逆にいろいろなことを知らないので、思い切ってできるのではないかという気もしています。全力を注いで、頑張ります。

—最初は、どのようにお話が来たのですか?
去年の夏ぐらいに折江先生からお電話をいただき、「『蝶々夫人』って、どう思われますか?」と聞かれました。そのときは、まさかこんなお話がくるとは思いもよらなかったので、「将来的には歌ってみたいですが、今の自分が歌うには不安があります。」とお返事をしたのです。そのあと、声を聞いていただく機会があり、しばらくしてから今度は正式にお話をいただいてびっくりしました。
—そうだったのですね!折江さんは、迫田さんに注目していらしたのですね。
どうでしょうか(笑)。でも、気にかけてくださっていたようで。とてもありがたいお話です。決まった瞬間は、にわかに信じられなくて、実感するまでに時間がかかりました。正式なオファーをいただいたとき、実はドイツにいまして、ミュンヘン国際コンクールを受けていたのです。残念ながら予選通過ならずその結果発表の日にこちらの『蝶々夫人』のご連絡をいただき、「これは夢かもしれない」と。そのオファーをいただけたことで、気分が晴れました!
—それは、運命的な瞬間ですね!この「蝶々夫人」という役にはいろいろな側面があると思いますが、今どういった人物像をつくっていこうと考えていますか?
楽譜を見たり、原作を読んだりしていくなかで、芯の強い女性だということは感じています。ただ、ときどき冗談も言ったりして、その冗談がとてもかわいらしくて。「やっぱり10代の女の子なのだな」と感じたので、自分が演じるときも芯の強さとかわいらしさを併せ持った女性でいられたらいいなということは思っています。蝶々さんは結婚して、そのあと出産して、子育てして、という女性としてすごく大きなイベントをこの2時間ちょっとのあいだに経験するのですが、特に結婚する第一幕と、出産して子育てをして3年が過ぎた第二幕の、このあいだをどう埋めるかというところを、つくりあげていきたいと思います。
—第一幕と第二幕のあいだに、確かに3年という年月が経っていますね。
第一幕では、蝶々さんは15歳。3年経つと18歳になっています。15歳から18歳の女性の成長って、現代で考えても結構大きいじゃないですか、体も心も。それがこの物語の時代となると、また相当に大きな変化なのだろうなと思っていて。しかも、そのあいだに出産も経験します。そもそもはじめの15歳の頃からして、家が没落して芸者に身をやつしているという過酷な状況にあり、大人にならざるを得ず、そのなかでも垣間見える若い女性としてのかわいらしさをどう表現したらよいか。それを模索していきたいです。

—妻で、母で、けれどもひとりの若い女性でもあるという蝶々さんの表現、なかなかやりがいがありそうですね!楽しみにしています。この『蝶々夫人』、よく知られた作品ではあると思いますが、改めて楽譜や原作、そして役に直に触れてみて「ここが見どころ」と迫田さんが感じる、いちおしのシーンはありますか?
そうですね、勉強していると、全部が見どころのような気がしてきていますが(笑)、あえて挙げるならば、やはり一番有名な蝶々さんのアリアである「ある晴れた日に」。この歌に、蝶々さんの本質が全部含まれていると感じます。夫となったピンカートンの、アメリカからの帰りを一途に待つ気持ちだったり、「でも私は隠れて待っているの」という遊び心だったり。そういったコロコロ変化する蝶々さんの心情を、このアリアから感じ取っていただけたらと思います。